頻尿(ひんにょう)というトイレが近い症状には、多くの原因やいくつかのタイプがあります。
病気が関係していることもありますし、生活習慣を見直すことで比較的簡単に治ることもあります。
今回はトイレ(おしっこ)が近い、頻尿について、原因や対策方法などを解説していきます。
トイレが近い、原因はなに?
健康な人のトイレに行く回数は、1日で5~6回くらいだと言われています。これよりも多い場合は、何らかの原因があると考えられており、トイレに行く回数が異常に多い場合は頻尿とされます。
頻尿には大きく分けて、多尿(たにょう)による頻尿と、多尿ではない頻尿の2つのタイプがあります。
多尿による頻尿の原因ってなに?
一般的に1回の排尿で出る尿の量は200㎖~400㎖、大人では1日に出る尿の合計が1000㎖~1500㎖くらいだと言われています。
1日に2500~3000㎖以上の排尿がある場合には多尿で、多尿による頻尿には次のような原因があると言われています。
- 飲料水の摂取が多い
- 糖尿病
- 抗利尿ホルモンの減少
- 腎臓機能の低下
それぞれについてくわしく解説していきます。
飲料水の飲み過ぎでトイレが近い?
尿を作る腎臓(じんぞう)には、体内の水分量を一定に保つ、という働きがあります。
からだに摂りいれた水分が多い場合は尿として排泄し、水分が足りない場合は再吸収などを行って、尿として排出する量を少なくします。
頻尿の原因のひとつに、飲料水の飲み過ぎがあるのです。
ストレスや精神的な問題が原因で、異常な量の水分摂取を行うことを「心因性多飲症(しんいんせいたいんしょう)」といい、喉がかわいているわけでもないのに、1日に4~6ℓもの飲料水を摂取することがあります。
多飲による頻尿では、トイレに行く回数も、1回の尿量も多く、薄い水のような尿を1日に4~5ℓほど排泄します。
自分が思っている以上に多くの水分を摂っていることがあります。頻尿の原因が多飲によるものかもしれない、と思われる場合は、1日の飲料水の摂取量を記録することが改善につながることもあります。
からだに摂りこまれる水分には、飲料水のほかに、食べ物に含まれる水分もあります。食べ物の中には水分の多いすいかなどの果物や生野菜などもありますね。
大きなストレスが多飲の原因になっている場合には、精神科などで相談するのもひとつの方法です。
抗利尿ホルモンの減少でトイレが近い?
排尿の量は、脳で産生され分泌される「抗利尿ホルモン(バジプレシン)」によってもコントロールされています。
抗利尿ホルモンには、尿を濃縮する働きがあり、減少したり作用しなかったりすると薄い尿が多く出ることになります。
抗利尿ホルモンが原因の頻尿は、尿崩症(にょうほうしょう)と呼ばれ、泌尿器科や内科などがある医療機関で、改善する薬が処方されることもあります。
抗利尿ホルモンは、次のような場合にも抑えられると言われています。
- アルコールを飲んだとき
- ある種の薬剤を服用したとき
- 寒いときや妊娠初期、生理前など、体内の水分量が増えるとき
◯アルコールやある種の薬剤には、抗利尿ホルモンの分泌を抑える作用があることが知られています。
◯寒くなると、体温を逃がさないために、皮膚からの水分蒸発が抑えられますので、体内に水分がたまりやすくなります。
妊娠や生理のときには女性ホルモンの影響で、体内に塩分や水分がたまりやすくなります。また、塩分のとり過ぎは、頻尿のひとつの原因と言われています。
糖尿病でトイレが近い?
血液中の糖分が多くなる糖尿病の場合、尿の中にも糖分が混じりますが、その時に水分が引き込まれ、尿の量が多くなると言われています。
糖尿病の有名な症状のひとつに多飲がある理由は、多尿によりからだの水分が多く失われることで喉がかわくからです。
糖尿病での多尿や頻尿は、糖分を摂りすぎないようにすることで、改善が可能だと言われています。
腎臓機能の低下でトイレが近い?
腎臓の機能が低下すると、体内にたまりやすくなる尿素窒素などの老廃物を流すために、からだは多くの水分を欲するうえに、尿を濃くして排出量を調節する腎臓の働きが衰えているために、多尿・頻尿になると考えられています。
腎臓が機能低下を起こすと、通常、夜間よりも日中の方が多い排尿が、夜間に多くなると言われています。
糖尿病や腎臓機能の低下は、血液検査などである程度、調べることができますので、気になる場合は、糖尿病内科や腎臓内科、内科などを受診してくださいね。
多尿でない頻尿の原因ってなに?
1日の尿量が特に多いわけではない頻尿には、次のような原因があると言われています。
- 膀胱(ぼうこう)の容量が小さくなっている
- 膀胱が押されている
- 過活動膀胱(かかつどうぼうこう)になっている
膀胱の容量が小さくなってトイレが近い?
腎臓で作られた尿はいったん膀胱にためられます。平均的な膀胱の容量は500㎖ほどで、通常は70~80%くらい尿がたまると排出されることになりますが、膀胱の容量が小さくなるとためておける尿が少なくなり、頻繁にトイレに行くことになります。
膀胱の容量が小さくなる原因には、次のようなことがあると言われています。
- 膀胱炎を発症して、膀胱が縮んでいる
- 膀胱の中に巨大な結石がある
などです。
膀胱が縮む膀胱炎には、結核にかかって引き起こされる委縮性膀胱炎(いしゅくせいぼうこうえん)や、放射線治療による放射線膀胱炎などが知られています。
膀胱炎では
- 排尿の時に痛みや違和感
- 残尿感
などの症状がともない、1回の尿量も少ない傾向にあります。
結石とは、塩類などの成分がくっついて固まったもので、膀胱結石は95%が男性に発症するとされています。
膀胱結石の症状に、
- 頻尿
- 排尿が途中でとまる
- 尿に血が混じる、濁る
- 腹痛
などがあると言われています。
膀胱炎や結石が疑われる場合は、泌尿器科や内科などでの受診をおすすめします。
膀胱が押されて、トイレが近くなる?
膀胱が外から押されて容量が小さくなる原因には、次のようなことがあります。
- 妊娠のよる子宮からの圧迫
- 巨大な子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)
- 直腸の腫瘤(しゅりゅう)
妊娠で膀胱が押されるのは正常なことですので、出産後、圧迫による頻尿は解消されます。
◯子宮筋腫自体は良性ですが、腹痛や腰痛を引き起こしたり、膀胱や尿管への圧迫が腎臓機能の低下を引き起こすこともありますので、気になる場合は婦人科などを受診されることをおすすめします。
◯直腸とは大腸の一部で膀胱の近くにありますので、大きな腫瘤(しゅりゅう)ができた場合は、膀胱が押されることになります。腫瘤とは腫(は)れた瘤(こぶ)のことで、良性のものや悪性のものなど色々あります。
気になる場合は、消化器科や内科などを受診されるといいでしょう。
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)でトイレが近い?
過活動膀胱(overactive bladder:OAB)には、次のような特徴があるとされています。
- 急にトイレに行きたくなる
- 我慢できないほどの尿意がある
- 1日に8回以上トイレに行く
- 夜中に1回以上、トイレに行く
- 我慢できずに漏らしてしまうこともある(切迫性尿失禁)
などです。
女性では40歳以上の約10.8%に過活動膀胱がみられるとされ、次のような原因により、膀胱が過剰に収縮を起こすためトイレが近くなります。
- 前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)
- 排尿をつかさどる筋肉や神経の異常
- 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)の弱り
- 脳の血管障害や、認知症などにみられる中枢障害
- 脊髄(せきずい)の障害
- 加齢
などです。
過活動膀胱は、薬物療法での改善が可能だと言われています。
前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)ってなに?
高齢の男性でもっとも多い過活動膀胱の原因は、膀胱の下で尿道の周りにある前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」という病気で、55歳以上の男性の5人に1人が発症すると言われています。尿道が圧迫されることで、膀胱が過剰に収縮を起こします。
前立腺肥大症では、
- 尿が出にくい
- 残尿感がある
- 尿が途中で途切れる
- 尿の勢いが弱い
- 尿線が細い
などの症状もでると言われています。
前立腺肥大症の治療には、泌尿器科などで薬物療法などが行われます。
排尿をつかさどる筋肉や神経の異常
ストレスや緊張状態が長く続いたり、膀胱炎があったりすると、膀胱をコントロールしている神経の働きが悪くなり、少しの刺激で膀胱利尿筋が反応を起こし、過活動膀胱を起こすことがあります。
◯排尿の時に痛みや違和感があり、残尿感、発熱、腰痛などもある場合は、膀胱炎が疑われます。
膀胱炎は、排尿を我慢したり、性交渉や生理時に清潔さが損なわれたり、大便時の大腸菌が尿道に入り込んだりすることで発症します。
女性の場合、温水便座(ウォシュレット)を使ったあとの拭き方などにも注意が必要だと言われています。
膀胱炎は、急性であれば比較的容易に治癒すると言われていますので、内科や泌尿器科などを早めに受診することが大切です。
骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)の弱り
過活動膀胱の原因のひとつに、骨盤底筋群の衰えが関係しているとされています。
膀胱からつながる尿道の周りには外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)や骨盤底筋群があり、尿道をギュッと締めて、尿が漏れないようにする働きがありますが、加齢や出産などで筋力が衰えることがあります。
骨盤底筋群は、肛門の筋肉と関係しているため、肛門をしめたり緩めたりする運動をすることで鍛えることができるとされています。運動での改善はすぐには現れませんが、続けることで効果が期待できます。
ツボをマッサージして頻尿を改善する!
からだには、目には見えませんが、各器官と経絡(けいらく)でつながっているツボ(反射区)があり、刺激することで膀胱や腎臓をリラックスさせたり、活性化させる効果が期待できます。
急な尿意をやわらげる足ツボ
足の小指には、膀胱につながっている「膀胱経(ぼうこうけい)」という経絡が通っており、トイレに行きたくても近くにトイレがない時などに役立てることができます。
小指を動かしたり、もんだりすることで尿意を静める効果があるのです。
日ごろから小指全体をよくもみほぐしておくと、頻尿や子供のおねしょなどを改善する効果も期待できます。
膀胱をリラックスさせる足裏のツボ
足にはほかにも、膀胱とつながっているツボ(反射区)があり、刺激することで、過活動膀胱などで縮こまっている膀胱をリラックスさせ、機能を回復させる効果があります。
足裏の真ん中にある「足心(そくしん)」というツボは、腎機能の回復に効果があります。
ただし、足のかかと付近には、子宮につながるツボがありますので、妊婦さんは刺激しないようにしてくださいね。
手の小指にある泌尿器系の機能を高めるツボ
手の小指には、腎臓や膀胱の機能を高める効果のある「少沢(しょうたく)」というツボがあります。
手のひら側の「夜尿点(やにょうてん)」は、子供のおねしょの改善にも効果があると言われています。
心因性の頻尿に効果のあるツボ
ストレスや心因性の頻尿を改善する効果のあるのは、足の親指にあるツボです。
親指全体をよくもみほぐすといいでしょう。
前立腺肥大症の改善に効果のあるツボ
足の甲にある「太衝(たいしょう)」というツボは、男性の前立腺肥大症の改善に効果があると言われています。
太衝(たいしょう)の位置は、親指と人差し指から続く骨のあいだです。
まとめ
トイレが近いという頻尿について原因や対処法、改善方法などを見てきましたが、いかがでしたか。
トイレが近いと、ほんと、困ることも多いですよね。
でも改善させる方法は、色々あります。
専門の医師の診察を受け、薬で改善することも多いと言われています。
また、並行して日ごろからツボを刺激することで、膀胱や腎臓の機能を活性化させると頻尿も改善することがあります。
特に足の裏を鍛えたり、ほぐしたりするのはおすすめです。
筆者も毎日、かかとを上げて歩いたり、足の裏を金づちで叩いたりしています ^^) 、