耳が突然聞こえなくなったり、こもって聞こえにくくなるのは、一時的なこともありますが、早めの対応が必要なものもあります。
耳が聞こえない、または聞こえにくいという症状には、様々な原因があり、幼児に起こることもあります。
今回は、耳に起きた聞こえない、聞こえにくいという症状について解説していきます。
この記事の目次
耳が聞こえない!? どんな病気?
まずは「突然耳が聞こえない」、となったのか、「 徐々に耳が聞こえなくなった」のか、分けて見ていきましょう。
突然に起きた「耳が聞こえない!」
突然、耳が聞こえない、となった場合の病気には色々なものがあり、片方だけなのか、両側なのかによって考えられているものに違いがあります。
片方の耳だけが聞こえないという場合
- ウイルス性蝸牛炎(かぎゅうえん)
- 突破性感音難聴(とっぱせいかんおんなんちょう)
- 耳垢栓塞(じこうせんそく)
- 片頭痛(へんずつう)
- 中耳炎(ちゅうじえん)
- 鼓膜穿孔(こまくせんこう)
- 気圧外傷(きあつがいしょう)
- 外リンパ瘻 (がいりんぱろう)
両側の耳が聞こえない場合
- 髄膜炎(ずいまくえん)
- 内耳梅毒(ないじばいどく)
- 自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)
それぞれについて、おもな症状や特徴などを解説していきます。
突然の「耳が聞こえない!」という病気
ウイルス性蝸牛炎(かぎゅうえん)
耳の一番奥の部分、内耳(ないじ)にはカタツムリの形をした 蝸牛(かぎゅう)という器官があり、音を感受するセンサーの役割をしています。
この蝸牛にウイルスが侵入し炎症を起こすことで、 細胞が傷つき、聞こえない、という症状がでると言われています。
ウイルスには、サイトメガロウイルスやおたふく風邪(流行性耳下腺炎:りゅうこうせいじかせんえん)のムンプスウイルスなどが知られています。
また、中耳炎や髄膜炎が進行してウイルス性蝸牛炎を発症することもあると言われています。
ウイルス性蝸牛炎のおもな症状
ウイルス性蝸牛炎は、耳が聞こえない、聞こえにくい、というほかに、 耳鳴り・めまい・嘔吐をともなうことがあると言われています。
突発性感音難聴(とっぱつせいかんおんなんちょう)
朝起きたときなどに、突然発症し、原因が分からなく、しかも聞こえない程度が高度なものを突発性感音難聴と言われています。
感音難聴とは、耳の一番奥にある内耳の障害が原因でおこる難聴の総称で、蝸牛の有毛細胞が損傷することがおもな原因と考えられています。
感音難聴に対し、外耳や中耳の障害で発症する難聴を伝音難聴(でんおんなんちょう)といい、音を伝えることができるように治療すれば、治ることも多いと言われています。
突発性難聴は原因が特定できないもののことですが、循環障害とウイルス感染が原因ではないかと言われています。循環障害とは、血液やリンパの流れが悪いために障害が現れる、というものです。高血圧や糖尿病を患っている人に起きやすいとも言われています。
突発性感音難聴のおもな症状
突発性感音難聴は耳が聞こえない、というほかに、 耳鳴り・かゆみ・詰まった感じ・圧迫感・めまいなどをともなうことがあります。
突発性難聴は特に、早期治療が重要だと言われています。
耳垢栓塞(じこうせんそく)
耳の垢(あか)が詰まってしまうことを耳垢栓塞(じこうせんそく)といいます。
耳垢栓塞は伝音難聴のひとつで、耳に水が入って耳垢が膨張したり、耳掃除の際に耳垢をどんどん奥に押し込んでしまったりと、いろいろな原因で起こってしまいます。
耳垢栓塞のおもな症状
耳垢栓塞では、耳か聞こえない、聞こえにくい、というほかに、 かゆみ・詰まった感じ・圧迫感などをともなうと言われています。
耳垢栓塞についてはこちらで詳しく解説しています。
片頭痛(へんずつう)
片頭痛は、脳の血管の一部にけいれんが起こり、血液の流れが悪くなることで一部の血管が広がり、その反動で痛みが起きている、と言われています。内耳に向かっている血管が詰まると、片頭痛とともに、耳が聞こえにくい、という症状が出ることもあるのです。
片頭痛のおもな症状
片頭痛が原因の場合は、 耳鳴り・かゆみ・つまった感じ・こもる・圧迫感・めまい・低い音がより聞き取りづらいという症状をともなうことがあると言われています。
片頭痛に関してはこちらでも詳しく解説しています。
中耳炎(ちゅうじえん)
中耳炎は鼓膜から内耳までの間にある中耳に炎症が起こるもので、喉の奥などから細菌やウイルスが侵入し、感染することで発症します。子供が発症しやすい耳の病気でもあると言われています。
中耳炎のおもな症状
中耳炎になると、耳が聞こえにくいというほかに、 かゆみ・詰まった感じ・圧迫感・発熱などをともなうことがあると言われています。
中耳炎には4つのタイプがあり、詳しいことはこちらで解説しています。
鼓膜穿孔(こまくせんこう)
鼓膜が破れた、あるいは穴が開いた状態を鼓膜穿孔(こまくせんこう)と言います。耳かきをしているときや、強い気圧の変化、また、頭の横を骨折することでも生じることがあります。
鼓膜穿孔のおもな症状
鼓膜穿孔は、耳が聞こえない、聞こえにくい、ということのほかに、耳が痛い・詰まった感じ・圧迫感・耳だれをともなうことがあると言われています。
気圧外傷(きあつがいしょう)
鼓膜は、耳の外の空気圧と、耳の中の空気圧が、鼻の穴に続いている耳管(じかん)によって一定に保たれることで、正常でいることができます。
気圧の調整役である耳管が開かず、中の空気圧が下がったままでいると鼓膜が中に引っ張られ、中耳が損傷してしまうことがあります。これを気圧外傷と言い、痛みが発生したり、悪くすると鼓膜が破れてしまうこともあります。
気圧外傷の原因は?
気圧外傷が起こる耳管が開きづらい原因には、 感染症、風邪、アレルギー、腫瘍(しゅよう)などがあると言われています。
また、飛行機に乗っているときや、潜水しているときなど、強い気圧の変化があるときも、気圧外傷を発症することがあります。
気圧外傷のおもな症状
気圧外傷は、耳が聞こえにくい、というほかに、 出血・めまいをともなうこともあると言われています。
内耳梅毒(ないじばいどく)
内耳梅毒はトレポネーマ・パリダムという病原微生物が原因で発症し、先天性のものと後天性のものがあります。後天性の場合は特に両側の耳が聞こえない、聞こえづらい、ということが起こります。
先天性のものは、幼児期または10歳を過ぎてから発症することが多いと言われています。女子においては月経や妊娠を機に発症することもあります。
内耳梅毒のおもな症状
めまいや耳鳴りの症状があり、メニエール病と似ていますが、血清反応を見ることで判別されることが多いと言われます。
その他の病気
突然耳が聞こえなくなった、聞こえにくくなったという病気には、ほかに次のようなものがあります。
● 内耳の一部に穴が開き、外リンパ液が中耳に漏れてくる、外リンパ癭(がいりんぱろう)・・・{おもな症状に、耳鳴り・めまいなど}
● 外耳に炎症が起きる、外耳炎(がいじえん)・・・{おもな症状に、かゆみ・詰まった感じ・圧迫感など}
● 脳や脊髄をおおっている膜に炎症が起きる、髄膜炎(ずいまくえん)・・・{おもな症状に、発熱・めまい・頭痛など}
免疫細胞が異常行動を起こす、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)・・・{おもな症状に、耳鳴り・かゆみ・詰まった感じ・こもる・圧迫感・めまいなど}
徐々に起きた「耳が聞こえない」
徐々に、耳が聞こえなくなった、聞こえづらくなった、という場合に考えられる耳の疾患には次のようなものがあると言われています。
おもに片方だけの場合
- メニエール病
- 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
おもに両側の場合
- 騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)
- 耳毒性(じどくしょう)
- 遺伝性
- 多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)
- 老年性難聴(ろうねんせいなんちょう)
徐々に「耳が聞こえない!」という病気
メニエール病
内耳にある蝸牛内のリンパ液がたまってしまうと器官がむくみ、神経を圧迫することで発症するのが、メニエール病です。
メニエール病のおもな症状である めまいは突然発症することが多いですが、耳が聞こえにくくなるのはゆっくり進行することが多いと言われています。
メニエール病のおもな症状
その他のおもな症状に、 耳鳴り・かゆみ・詰まった感じ・圧迫感・低い音がより聞き取りづらいということがあります。
メニエール病に関してはこちらで詳しく解説しています。
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)とは、聴神経の周りをおおっているシュワン細胞から発生すると考えられている良性の腫瘍です。良性ではありますが、徐々に大きくなっていくことがあり、進行すると三叉神経痛、顔面神経麻痺、頭痛、嘔吐、平衡失調などの症状が出ることがあると言われています。
聴神経腫瘍のおもな症状
聴神経腫瘍では、耳が聞こえない、聞こえにくいということのほかに、 耳鳴り・かゆみ・詰まった感じ・圧迫感・めまい・顔面のしびれ・筋力低下・複視・頭痛などがあります。
騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)
騒音がする場所に長期間いたり、一回でも大きな音を聞いたことで、蝸牛にある有毛細胞が障害され、発症するのが、騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)です。
騒音性難聴のおもな症状
騒音性難聴は、耳が聞こえない、聞こえにくいということのほかに、 耳鳴り・高い音がより聞き取りづらい・騒がしい場所でより聞き取りづらい・音の聞こえてくる方向が分かりづらいということなどが見られます。
その他の病気
その他に、徐々に耳が聞こえなくなった、聞こえにくくなったという病気には、次のようなものがあると言われています。
● 一部の薬剤が原因で発症する耳毒性(じどくしょう)・・・{おもな症状:耳鳴り・高い音がより聞き取りづらいなど}
● 遺伝により発症する遺伝性難聴・・・{ほかの症状:めまい・高い音がより聞き取りづらいなど}
● 神経細胞が変性してしまうことで様々な症状がでる多発性硬化症・・・{おもな症状:耳鳴り・めまい・音の聞こえてくる方向が分かりづらい}
● 生理的な老化現象のひとつとして発症する老年性難聴(ろうねんせいなんちょう)・・・{おもな症状:耳鳴り・高い音がより聞き取りづらい・騒がしい場所でより聞き取りづらい・音の聞こえてくる方向が分かりづらい}
機能難聴(きのうなんちょう)とは?
耳や神経に異常がないにも関わらず、聞こえにくいと感じるものに機能難聴と呼ばれるものがあり、心因性であることが多いと言われています。
心因性の難聴は、女性や子供に多く、強い精神的ストレスが原因で発症すると考えられています。
まとめ
いかがでしたか。
耳が聞こえない、または聞こえにくくなる病気は、耳の障害から、脳や神経の障害、または心因性のものまでいろいろあります。
耳はとても小さい器官で、奥に行けば行くほど複雑で、骨にも囲まれていますので、異常の原因を特定するのもとてもむつかしいと言われています。
中には、早急に対応が必要なものがあります。耳がおかしいと思ったら、できるだけ早く医師の診察を受けてくださいね。
睡眠をきちんととって、水分不足にならないようにすることも大切ですね ^^)