アミノ酸は、体のあらゆる場所に存在し、様々な役割を果たしています。10万種類にもおよぶタンパク質を形成したり、エネルギー源になったり、体の機能をコントロールしたりして、たくさんの効果・効能をもたらしているのです。
アミノ酸については、研究が進められるにつれ、新たな作用や効果がどんどん明らかにされ、色々な分野で役立てられています。
今回は、アミノ酸のダイエット効果や、肌・髪などの美容効果、健康効果、からだや筋肉の疲労回復効果、医療分野での効果などを中心に、アミノ酸の種類や摂取方法なども解説していきます。
この記事の目次
アミノ酸の効果・効能ってなに?
私たちの体にある、筋肉や髪の毛、肌、骨、内臓、血液中の白血球・赤血球、ホルモン、酵素、抗体などあらゆるものがアミノ酸でできています。
アミノ酸は、特徴的な構造(アミノ基とカルボキシ基)をもつ物質(有機化合物)で、お互いにくっつきあうことができます。2個~数10個つながったものは「ペプチド」と呼ばれ、それ以上つながると「タンパク質」と呼ばれます。
私たちの体には約10万種類のタンパク質があると言われていますが、タンパク質を構成するアミノ酸はたったの20種類です。
アミノ酸には、タンパク質をつくらない種類も自然界に200種類以上もあると言われており、私たちの体の中にも血液や臓器、組織の中に存在しています。
ここからは次のような効果別に、アミノ酸の種類や特徴・作用などを解説していきます。
- 脂肪の燃焼を促進するダイエット効果
- 肌の潤いを保つ効果
- 髪の色や健康を保つ効果
- 持久力を維持する効果
- 筋肉、体の疲労を回復する効果
- 疲労感をやわらげる効果
- 脳の疲労を回復する効果
- 免疫力を高める効果
- 睡眠の質を高める効果
- 二日酔いを予防する効果
- 医療分野で役立つアミノ酸
- 食べ物をおいしくし、口内を健康にする効果
脂肪の燃焼を促進するダイエット効果
基礎代謝を高めるアミノ酸
体についてしまった脂肪を効率よく燃焼させるためには、高い基礎代謝力が必要です。
基礎代謝とは、何もしていない状態でのエネルギー消費量のことで、基礎代謝力は高い方が脂肪が消費されやすく、ダイエット効果が高いと言われています。
基礎代謝力を高めるためには、筋肉の量を増やすことが大切で、筋肉のタンパク質をつくる20種類のアミノ酸が必要ですが、中でも体内で合成できなかったり、合成されてもわずかだったりするアミノ酸(必須アミノ酸)は不足しないように摂ることが重要です。
必須アミノ酸のうち、ロイシン、バリン、イソロイシンには、筋肉のタンパク質を合成しやすくするうえに、タンパク質が分解されるのを防ぐ働きのあることが知られています。
ロイシン、バリン、イソロイシンは構造上でも似た特徴(枝分かれ構造)があるため、分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸(BCAA:Branched Chain Amino Acids)と呼ばれています。
脂肪の蓄積を防ぐアミノ酸
アミノ酸の中には、一緒に摂ることで消費エネルギーを増やし、脂肪を燃焼させ、脂肪がたまるのを防ぐ効果を発揮するとされる「BCAA+リジン+スレオニン」もあります。
リジンやアルギニンは、単独でも脂肪の燃焼を増やす効果があると言われています。
ダイエット効果をさらに高めるために
脂肪を燃焼させやすいアミノ酸を摂りいれたら、運動することでさらにダイエット効果が高まるとされています。
運動には、 タンパク質の合成を高める効果があるため、筋肉がつきやすいうえに、エネルギーの消費が増えるので、脂肪を減らしやすいというわけです。
ストレッチなどの軽い運動でいいので、体を動かすといいですね。
肌の健康を保つアミノ酸の効果
アミノ酸は肌にとっても大切な物質で、次のような様々な働きがあります。
- 体の一番外側に膜を作り、水分を逃がさない
- 細菌やダニなどの微生物、金属、化学物質を体内に入れない
- 紫外線の害から体を守る
- 肌の弾力を保つ
- 肌の老化を抑える
それぞれの効果について、くわしく解説していきます。
体の一番外側に膜を作り、水分を逃がさない
体の最も外側にある角層(角質層)と呼ばれる膜は、0.01~0.02㎜ほどの厚さですが、体の水分を外に逃がさない大切な働きをしています。
角層で水分保持に重要な役割を果たしているのが「天然保湿因子(てんねんほしついんし:NMF)」と呼ばれる成分で、アミノ酸やアミノ酸からなる物質が50%を占めています。
中でも、グルタミン酸やグルタミンというアミノ酸は 「ピロリドンカルボン酸(PCA)」と呼ばれる高い水分保持効果を持つ成分に変化する機能があるため、多くの保湿用化粧品にも利用されています。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎の肌では、アミノ酸が不足していると言われています。
細菌やダニなどの微生物、金属や化学物質を体内に入れない
角層には、バリアとしての機能もあり、細菌やダニなどの微生物、金属や化学物質などが体内に侵入するのを防ぐ働きもしています。
バリア機能は、アミノ酸によってつくられた丈夫なタンパク質「ケラチン」が脂質とともに外敵の侵入を防いでいるほか、角層を含む表皮全体で「フィラグリン」と呼ばれる保水力にも優れたタンパク質が担っていると言われています。
肌の内部に侵入した微生物は、抗菌性のあるペプチドが攻撃し、壊れたバリア機能も修復しています。
抗菌ペプチドは汗にも含まれており、肌表面でも殺菌効果を発揮していると考えられています。
紫外線の害から体を守る
アミノ酸は、紫外線の害からも体を守っています。
ヒスチジン(アミノ酸)が、紫外線を吸収する役目をもつ「ウロカニン酸」を化学反応(代謝)によりつくり出し、チロシンやシステイン(ともにアミノ酸)は、様々な光を吸収し肌が炎症を起こしたり、細胞ががん化するのを防ぐ「メラニン」をつくったりしています。
プロリンやアルギニン(アミノ酸)は、紫外線による脂質の酸化を抑えるとされています。
肌の弾力を保つアミノ酸
肌の弾力に関係しているアミノ酸は、グリシンやプロリン、リジンなどで、数種類のコラーゲンというタンパク質をつくり、靭帯(じんたい)や骨、血管などにも存在しています。
コラーゲンは、鎖のようにつながったアミノ酸鎖が3本、らせん状に伸びた強い構造をしていますが、コラーゲンをさらに安定させるためには、アミノ酸のほかにビタミンCが必要だとされています。
ビタミンCはプロリンを、らせん構造を安定させるヒドロキシプロリンというアミノ酸に変換させる働きがあるのです。
肌の老化(酸化)を抑えるアミノ酸
肌の老化には活性酸素が大きく関わっていると言われていますが、それはコラーゲンやエラスチンと言ったタンパク質や、セラミドと呼ばれる脂質を、活性酸素が酸化(劣化)させるためと考えられています。
エラスチンは、アミノ酸が長くつながった構造をしているタンパク質で、肌の弾力性を保つ働きがあります。
セラミドは、角層の細胞間にあって、細胞同士をつなぎとめる働きのある脂質の主成分です。
活性酸素を消去する働きがあるアミノ酸には、ニキビの原因と言われるアクネ菌が作り出す活性酸素を消去するヒスチジンや、毒性の強い活性酸素(ペルオキシナイトライト)をとらえて、酸化の進行を抑える働きのあるチロシンなどがあり、酸化を食い止める効果があると考えられています。
髪の健康を保つ効果
髪の毛の主成分は、18種類のアミノ酸がつくる角化したケラチンというタンパク質で、ケラチンに最も多く含まれているアミノ酸はシスチンです。
髪の毛と肌の違いは、髪の毛には自己修復の機能がないことで、髪の毛が傷んでしまった場合は、外部からアミノ酸を与えるしかありません。
ちなみに髪の毛の色は、チロシン、システインというアミノ酸の含まれる割合によって決まり、チロシンが多いと黒になり、システインが多いと黄褐色や赤褐色になります。
チロシンやシステインが不足していると、髪は白く白髪になると言われています。
持久力を維持する効果
運動やスポーツをする人にとって疲れない体を持つことは理想だと思いますが、できるだけ筋力や体力を保つためには、アミノ酸の効果的な摂取が大切になります。
筋肉を動かすエネルギーは、糖質や脂質から供給されますが、不足してくるとアミノ酸が使われます。
アラニンやプロリンというアミノ酸には、肝臓で糖にかわるという機能があるため、運動の直前か、最中に補給することで、持久力を保つ効果があると言われています。
筋肉・体の疲労を回復する効果
スポーツアミノ酸と呼ばれるBCAAのロイシン、イソロイシン、バリンには、運動時のエネルギーとなる効率がよいうえに、タンパク質の合成が早いため、筋肉の疲れや痛みを速やかに回復させる効果があるとされています。
疲労してしまった筋肉を回復させたり、筋肉痛を予防したりするには、 十分な休息や睡眠に加え、アミノ酸を運動後すぐに摂るのが効果的だと言われています。
疲労の回復には、体を修復させる「成長ホルモン」の分泌を促したり、疲労物質と呼ばれるアンモニアが肝臓で解毒されるのを助けるアルギニンの摂取や、激しい運動で消費されるグルタミンの摂取なども有効だとされています。
運動量が多い人は、通常の1.5~2倍ほどのタンパク質摂取量が必要とされているため、消化や吸収の早い「プロテイン」という製品が活用されることもあります。
疲労感をやわらげる効果
運動時などの疲労感は、脳内にトリプトファン(アミノ酸)が多く入る事が原因のひとつと考えられていますが、BCAAはこのトリプトファンの脳内への侵入を抑える効果があると言われています。
体力の衰え(老化)を抑える効果
筋力を維持して、できるだけ長く自分の足で歩いたりするためには、運動とタンパク質(アミノ酸)の摂取が大切だと言われています。
筋肉は80%が水分で、残りの20%がタンパク質(アミノ酸)でできているため、必須アミノ酸を摂ることが、筋力や筋肉量が減って徐々に動くことが困難になるサルコペニア現象を防ぐのに有効だとされています。
脳の疲労を回復する効果
アミノ酸の中には、脳や眼の疲れを回復したり、血流を改善する効果のあるアミノ酸もあります。
ヒスチジンは脳に入るとヒスタミンに変化し、体のリズムを整えたり、集中力、判断力などに関係するヒスタミン神経を活性化させる効果があると言われています。
ヒスチジンは、かつおだしに多く含まれています。
免疫力を高める効果
免疫力は、体を異物から守ったり、がん化した細胞を排除したりして体を健康に保つための機能ですが、免疫細胞を助けているのもアミノ酸です。
グルタミンは、消化管のバリア機能である粘膜の栄養源になりますし、アルギニンは血管をやわらかくしたり白血球がもつ殺菌成分の原料になり、シスチンとテアニンは白血球を活性化させたり抗酸化物質であるグルタチオンの材料となって、免疫力を維持しているとされています。
シスチンは、システインが2個つながったアミノ酸で肉類に多く含まれ、テアニンは、お茶の葉に多く含まれています。
睡眠の質を高める効果
睡眠は、体の疲れだけではなく、脳の疲れをとるためにも必要で、しっかり疲れを取るためには「脳の眠り」と呼ばれるノンレム睡眠に深く入ることが大切です。ノンレム睡眠に深く入るためには、体の中心部の温度を速やかに下げる必要がありますが、ストレスや不規則な生活などが原因で自律神経が乱れたりしていると、うまく体温が下がらないこともあります。
アミノ酸のグリシンには、寝る前に摂ることで体の中心温度を下げやすくし、寝入りをスムーズにするだけでなく、睡眠を深くする効果があるとされています。
二日酔い・悪酔いを予防する効果
二日酔いや悪酔いになるのは、アルコールを分解する酵素が不足していたり、うまく働かないことで有害物質のアセトアルデヒドが体内に残っているためだと言われています。
アミノ酸のアラニンとグルタミンの混合物には、アルコールの分解を促進させる作用があるため、二日酔いや悪酔いを軽減させたり、早めに回復させたりする効果があるとされています。
医療分野で役立つアミノ酸
タンパク質をつくらないアミノ酸(遊離アミノ酸)は、細胞や血液の中に存在しており、健康な状態では、血液中の遊離アミノ酸の濃度やバランスが一定に保たれています。
そのため、血中のアミノ酸濃度やバランスの変化を調べることで、体の状態や将来的に生活習慣病などにかかるリスクなどを推測することが可能だとされています。
そのほか、医療の現場では、血管を柔軟にしたり、細胞を増やすポリアミンという成分の材料となったりするアルギニンが、床ずれの防止や治療、手術後の合併症の予防などに利用されています。免疫細胞のエネルギー源になったり、小腸で多量に必要とされるグルタミンは、潰瘍の薬に用いられたりしています。
アルギニンは、健康な大人では体内でつくり出すことができるアミノ酸(非必須アミノ酸)ですが、子供や怪我をしている人、感染症にかかっている人などでは、食べて摂りいれる必要のある必須アミノ酸です。
食べ物をおいしくし、口内を健康にする効果
アミノ酸には、うま味成分と呼ばれ、食べ物を美味しくする効果のあるアミノ酸もあり、昆布などに含まれているグルタミン酸は、だし汁などに利用されています。
グルタミン酸は、唾液の分泌を促す作用もあると考えれており、食べ物の飲み込みやすさや口内の健康、口臭の予防などに効果があると言われています。
食べ物に含まれるうま味成分はアミノ酸以外にも、かつおのイノシン酸や、干し椎茸のグアニル酸などがあり、一緒に用いることでうまみが増すことが知られています。
なおグルタミン酸は、チーズやトマト、発酵食品など多くの食べ物に含まれています。
アミノ酸の摂り方には注意が必要です
様々な働きや効果をもつアミノ酸ですが、何においてもある種のアミノ酸だけを過剰にとってもその効果は得られません。からだは様々な栄養素をバランスよくとることで正常に機能するからです。
かたよった栄養の摂り方は、ある種の栄養素の欠乏を発生させることにもなりますので、注意が必要です。
また、サプリメントなどでとる場合には、他の成分や発揮される効果の有無などをしっかり調べてから摂りいれるようにしたいものです。
まとめ
アミノ酸の効果を中心に、種類や働きなどを見てきましたが、いかがでしたか。
アミノ酸にはたくさんの種類があり、それぞれに素晴らしい作用や効果・効能があります。色々な食べ物に異なったアミノ酸が含まれていますので、偏りのない食事をして、とり損ねることがないようにしたいですね。