尿検査の潜血(せんけつ)反応で、プラス(陽性)の結果がでたということは、尿に血が混じっている恐れがあるということですが、血が混じる原因には実にさまざまなことがあります。
血が混じる原因によって、なるべく早く治療した方がいい場合もあれば、それほど心配のない場合もあります。
今回は、尿検査で潜血反応にプラス(+1、+2、+3)やプラスマイナス(±)の結果が出る意味、原因などについて解説していきます。
この記事の目次
- 1 「尿検査で潜血反応がプラス(+)」ってどういう意味?
- 2 尿検査の結果は間違うことも!?
- 3 血尿の原因には、何があるの?
- 4 尿をつくる器官に炎症や障害が起きる
- 5 尿路のどこかで、細菌に感染している
- 6 腎臓の一部が壊死(えし)してしまう病気
- 7 血栓(けっせん)や結石(けっせき)ができる病気
- 8 腫瘍(しゅよう)ができる病気
- 9 外傷
- 10 アレルギー
- 11 ナットクラッカー症候群
- 12 腎臓がブラブラしてる!?
- 13 突発性腎出血(とっぱつせいじんしゅっけつ)
- 14 潜血のプラスマイナス(±)やプラス(+)1、2、3の違いはなに?
- 15 尿検査で潜血反応が出たら、何科を受診すればいいの?
- 16 尿の採り方にも注意が必要です。
- 17 まとめ
「尿検査で潜血反応がプラス(+)」ってどういう意味?
尿検査で潜血反応にプラスが出たということは、尿に、目には見えなくても血液が潜(ひそ)んでいる(混じっている)恐れがあるということです。
血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンという物質が、尿検査で用いる試験紙の試薬の色を変化させることで、尿に血液が混じっていることがわかります。
ただし、試験紙に化学反応を起こさせる物質はほかにもあるため、血液(赤血球)が混じっていなくても、潜血に陽性反応が出ることもあります。
尿検査の結果は間違うことも!?
尿に血液が混じっていないのに、試験紙の尿検査で陽性反応(プラス)が出てしまうのは、尿に細菌や薬剤(ヨード剤やブロム剤など)、タンパク質(蛋白尿)などが含まれている場合です。
女性では、「終わったはず」と思っている生理の微量血液や、痔などの出血が排尿後の尿に混ざることも多いと言われています。
尿検査で間違って陰性になることもある!?
尿にビタミンcなどの薬剤成分が含まれているときは、血液が混じっているにも関わらず、潜血反応で陰性(マイナス)になることもあります。
尿検査の前には、薬剤などの服用に注意が必要ですね。
尿検査で潜血反応がでても...
試験紙を用いた尿検査は、スクリーニング検査(ふるい分けの検査)としての役割が大きいため、1回の検査結果がうのみにされることはありません。陽性と出た場合には、試験紙での再検査や、血液検査などを受けたり、顕微鏡を用いた検査でさらに詳しく調べられたりします。
詳しく調べる検査では、尿を遠心分離器にかけ、400倍に拡大した顕微鏡で沈殿物(尿沈渣:にょうちんさ)を観察し、毎1視野に5個以上の赤血球が観察されると「血尿(けつにょう)」とされます。
顕微鏡の検査では、赤血球の形を観察して、からだのどのあたりで血液が混じったかを推測するのも可能だと言われています。
血尿の原因には、何があるの?
血尿で心配なのは、尿を作っている器官である腎臓(じんぞう)や、尿の通り道である尿路(にょうろ)のどこかで、障害が起きているかもしれない、ということです。
血尿が出る原因は実にたくさんあり、中には、それほど心配のいらない、とされているものもあります。
血尿が出る原因は
- 尿をつくる器官に炎症や障害がある
- 尿路のどこかで、細菌に感染している
- 腎臓の一部が壊死(えし)している
- 血栓(けっせん)や結石(けっせき)ができている
- 腫瘍(しゅよう)ができている
- アレルギーで炎症が起きている
- からだが何かにぶつかって、腎臓が傷ついている
- 腎臓の血管がはさまっている
- 腎臓がブラブラしている
などです。
それぞれについて、くわしく解説していきます。
尿をつくる器官に炎症や障害が起きる
尿は腎臓で、血液を元に作られますが、正常な腎臓では、血液中の赤血球が尿に混ざらないように濾過(ろか)が行われています。腎臓の中にある糸球体(しきゅうたい)という糸くず状の毛細血管の壁(膜)が、赤血球を通さないのです。
糸球体に異常がでると赤血球が尿に混ざることになりますが、糸球体の病気にも様々なものがあります。
糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)
糸球体に炎症がおこる病気が糸球体腎炎で、風邪などに感染したあと発症する「急性糸球体腎炎」と、徐々に糸球体が障害される「慢性糸球体腎炎」があります。
●急性糸球体腎炎は、大人よりも子供に発症することが多く、むくみや尿の排泄量が乏しくなる乏尿(ぼうにょう)、高血圧などの症状が出ますが、ほとんどは治療で治ると言われています。
●慢性糸球体腎炎は、健康診断の尿検査で偶然発見されることが多く、腰痛や手足、顔のむくみなどの症状をともなうことがあるとされています。
進行性遺伝性腎炎(しんこうせいいでんせいじんえん)
生まれつき糸球体の膜に構造的な異常があるため、乳幼児期から血尿がでることもある、とされているのが、「進行性遺伝性腎炎(しんこうせいいでんせいじんえん)」です。
男性と女性で、腎機能が低下していく速さに違いがあるのが特徴で、男性よりも女性は進行が遅く、腎機能の低下に至らないこともあると言われています。
菲薄基底膜(ひはくきていまく)症候群
生まれつき糸球体の膜が薄いため、赤血球が通過しやすい「菲薄基底膜(ひはくきていまく)症候群」は、腎臓の機能が低下することもないことから「良性家族性血尿」と呼ばれたりします。
膠原病(こうげんびょう)
本来は外敵を攻撃し、からだを守るために備わっている「免疫機構(めんえききこう)」ですが、免疫細胞が正常な細胞を傷つけてしまう病気が膠原病(こうげんびょう) です。
膠原病の中に、糸球体を攻撃する「全身性エリテマトーデス」などの病気があります。
全身性エリテマトーデスは、10代後半から30歳までの女性に発症することが多く、貧血や発熱、関節痛、顔面の湿疹、手足の赤い斑点、日光によるただれ、脱毛、繰り返す口内炎などの症状がでるとされています。
嚢胞腎(のうほうじん)
腎臓の中に嚢胞(のうほう)と呼ばれる、液体がたまった袋ができてしまう病気が「嚢胞腎(のうほうじん)」で、たくさんできると「多発性嚢胞腎」となり、糸球体などが壊されたりします。
遺伝性があるので、子供に発症することもあると言われています。
尿路のどこかで、細菌に感染している
尿路感染症(にょうろかんせんしょう)
尿路(尿の通り道)のどこかで細菌に感染し、炎症が起きるものを「尿路感染症」といいます。
炎症が起きている場所によって、腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱炎(ぼうこうえん)、尿道炎(にょうどうえん)、前立腺炎(ぜんりつせんえん)などがあります。
原因となる細菌は大腸菌が多く、感染するのは女性が多いと言われています。
トイレは我慢せず、適度な水分摂取と早めの治療が大切です。
腎臓の一部が壊死(えし)してしまう病気
腎乳頭壊死(じんにゅうとうえし)
腎盂腎炎が進行して、腎臓の中の腎乳糖(じんにょうとう)という部分に血液が流れなくなり、細胞が壊死(えし)をおこす病気が「腎乳頭壊死」です。
血尿のほかに、にごった尿、発熱、腰痛などの症状がでることもあり、鎮痛剤の長期服用、糖尿病などが原因で発症することもあると言われています。
腎梗塞(じんこうそく)
腎臓の動脈の一部に血栓(血のかたまり)などがつまり、血液が届かない部分に壊死が起こる病気が「腎梗塞」です。梗塞の程度が大きい場合には、背中やわき腹に激しい痛みをともなうこともあると言われています。
腎皮質壊死(じんひしつえし)
腎臓の腎皮質(じんひしつ)という部分が壊死を起こしてしまうのが「腎皮質壊死」です。子供が発症することもあり、血圧の変化や、発熱、腰痛などをともなうことがあるとされています。
血栓(けっせん)や結石(けっせき)ができる病気
腎静脈血栓症(じんじょうみゃくけっせんしょう)
腎臓の静脈に血栓(けっせん)ができてしまう病気が、「腎静脈血栓症」です。
子供では尿にタンパク質が混じるネフローゼ症候群を、大人では腎臓に腫瘍(しゅよう)をともなっていることが多いと言われています。
尿路結石(にょうろけっせき)
尿の成分が結石という結晶をつくり、尿路を傷つけてしまうことがあります。結石ができる場所によって「腎盂結石(腎臓結石)」、「尿管結石」、「膀胱結石」、「尿道結石」などがあります。
日本人の20人に1人は、「一生のうちに1度は結石ができる」と言われており、痛みと血尿が主な症状ですが、腎盂などにできている場合は痛みがないこともあるとされています。
腫瘍(しゅよう)ができる病気
細胞が増えてできた固まりが腫瘍(しゅよう)で、良性のものと悪性のものがあります。
腎腫瘍(じんしゅよう)
腎臓に腫瘍ができるものを「腎腫瘍」といい、腎臓に痛みが出ることもあると言われています。
腎臓は背中側の腰のあたりにあります。
膀胱腫瘍(ぼうこうしゅよう)
「膀胱腫瘍」は、男性が女性に比べて多く、喫煙者が非喫煙者に比べて多いと言われています。
前立腺腫瘍(ぜんりつせんしゅよう)
「前立腺腫瘍」では、排尿時の痛み、腰痛、尿がでにくいなどの症状が出ることもあるとされています。
外傷
からだが勢いよく何かにぶつかった時などに、腎臓が傷つき、出血することもあります。
アレルギー
細菌の感染ではなく、薬剤などのアレルギーで膀胱に炎症が起きることもあり、「薬剤性アレルギー性膀胱炎」と呼ばれています。
ナットクラッカー症候群
腎臓とつながっている血管の一部が、横切る2本の大きな血管に挟まれて障害が起きることを「ナットクラッカー症候群」といい、はさまれる様子が、「くるみの殻をはさんで割る道具」ナットクラッカーに似ていることから、この名前が付けられています。
子供や若い人に多く、血流がせきとめられた細い血管が破れたりして、目で見ても分かるくらいの血尿が出ることもありますが、しばらく様子を見たり、手術が必要だったりと、対処のされ方は色々あります。
腎臓がブラブラしてる!?
遊走腎(ゆうそうじん)
腎臓は、周りの脂肪組織に支えられているため、からだを動かすと通常でも数㎝は動きますが、寝ているときよりも立った時の位置が10㎝以上も下がってしまう腎臓を「遊走腎(ゆうそうじん)」、または「腎下垂(じんかすい)」と言います。
痩せている女性に多く、 ほかに問題がなければ、特に治療する必要がないと言われています。
突発性腎出血(とっぱつせいじんしゅっけつ)
いろんな検査をしても、なぜ血尿が出ているのかわからないこともあり、「突発性腎出血」と呼ばれています。
潜血のプラスマイナス(±)やプラス(+)1、2、3の違いはなに?
尿検査の潜血反応にはマイナス(-)、プラスマイナス(±)、プラス1(+1)、プラス2(+2)、プラス3(+3)などがあります。
記号の意味としては、プラス(+)1以上で再検査が必要、プラスマイナス(±)とマイナス(-)は、ほかの項目や検査で異常がなければ、1年に1回の検査を受け続けることが必要、とされています。
プラスマイナス(±)やマイナス(-)であっても、気になることがある場合には、かかりつけの医師などに相談するのがいいでしょう。
また、もし腎臓に負担をかけるような、塩分のとり過ぎやかたよった食生活をしている場合には、改めるいい機会になりますね。
プラスの数字は、一般的に血液が含まれる程度を表わし、数字が大きいほど含まれる血液が多いというわけですが、含まれる血液の量と、原因となる病気の重症度とはあまり関係がないと言われています。
尿検査で潜血反応が出たら、何科を受診すればいいの?
尿検査で潜血反応に陽性が出たときは、自己判断をせずに、早めに泌尿器科や腎臓内科、内科などを受診されることをおすすめします。かかりつけの医師がいる場合には、そちらで受診されるのもいいでしょう。
腎臓は沈黙の臓器と言われ、自覚症状がないまま病気が進行することもあると言われています。
そのようなことにならないために受けるのが尿検査ですので、何はともあれ医師の診察を受けることが大切ですね。
尿の採り方にも注意が必要です。
尿検査では、尿の採り方にも注意が必要で、スクリーニング検査では出始めと終わりの尿は用いない方がいいとされています。
出始めの尿には、尿道口などにいる細菌が混ざってしまうことがありますし、最後の尿には分泌物などが入る恐れがあるからです。
まとめ
尿検査で潜血反応が出る意味や、血尿の原因などについて見てきましたがいかがでしたか。
尿検査は、からだに起きている異常を早期に発見し、軽いうちに治療を行うために役立つものです。
検査を受ける時は、尿の採り方などに注意して、潜血反応が陽性になったときは、すみやかに再検査などを受けるようにしたいですね。