手のひらの痛みやしびれには、さまざまな原因がありますが、症状が出ている場所(親指の付け根、中指の下、小指側、真ん中、側面など)で病気を推測することは可能です。
痛みかたの特徴(ピリピリした痛み、押して痛いなど)や、指の曲げ伸ばしができるかなどで、考えるられることもあります。
手は、肘や首などの障害が現れる場所としても知られています。
今回は手のひらに痛みやしびれをもたらす原因や特徴、発症しやすい人、治療方法などを解説していきます。
この記事の目次
- 1 「手のひらが痛い」原因はなに?
- 2 筋肉が異常に硬い、筋筋膜性疼痛症候群ってなに?
- 3 靭帯損傷(じんたい そんしょう)で手のひらが痛い?
- 4 神経が圧迫される、手根管(しゅこんかん)症候群
- 5 痛みが持続する、CRPSってなに?
- 6 手のひらや手首周辺の骨折
- 7 指の付け根が痛む、ばね指ってなに?
- 8 腫れがめだつ、関節リウマチ・MP関節炎
- 9 指の曲げ伸ばしができない、腱の断裂
- 10 親指の付け根が痛む、母指CM関節症ってなに?
- 11 手のひらがしびれる、肘部管(ちゅうぶかん)症候群ってなに?
- 12 首が原因!?頸椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)ってなに?
- 13 悪化させないために、早めの受診が大切です。
- 14 まとめ
「手のひらが痛い」原因はなに?
手にはたくさんの骨や筋肉、神経などがあり、ひとつひとつが小さかったり、細かったりするため、思わぬことで傷めてしまうことも少なくありません。
手でも特に「手のひら」に痛みやしびれをもたらす原因には、次のようなことがあります。
- 筋肉が異常に硬くなる、筋筋膜性疼痛症候群(きんきん まくせい とうつう しょうこうぐん)
- 骨をつなぐ靭帯(じんたい)が傷つく、じん帯損傷
- 手のひらの神経が圧迫される、手根管症候群(しゅこんかん しょうこうぐん)
- 痛みがおさまらない、CRPS
- 手のひらや手首周辺の骨折
- 指の付け根が痛む、ばね指
- 大きく腫れる、関節リウマチやMP関節炎
- 指の曲げ伸ばしができない、腱(けん)の断裂
- 手のひらがしびれる、肘部管症候群(ちゅうぶかん しょうこうぐん)
- 親指の付け根が痛む、母指(ぼし)CM関節症
- 首が原因、頸椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)
それぞれについてくわしく解説していきます。
筋肉が異常に硬い、筋筋膜性疼痛症候群ってなに?
筋肉が異常に硬くなって痛みを引き起こすことを、筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせい とうつうしょうこうぐん)と言います。
いつまでたっても筋肉痛が回復しないような状態で、傷ついた筋繊維が修復しないばかりか、血流がとどこおり酸素不足が続くことで筋肉が萎縮し、硬くなって痛みがでます。
全身に起こりえますが、手に症状が出る場合は、手のひらに力を入れて行う仕事をしていたり、冷やしすぎたりがおもな原因とされています。
食事の栄養面で、鉄分やカルシウム、カリウム、ビタミン類などの摂取不足が、原因のひとつとも考えられています。
筋筋膜性疼痛症候群の症状は?
痛み以外の症状に、次のようなことがあります。
- しびれがある
- やけどを負ったようにヒリヒリする
- ズキズキする
- 押すと痛い
- ものが握れない
などで、日や天候によって痛くなる場所が変わったりするのが特徴です。
筋筋膜性疼痛症候群は診断が困難!?
筋筋膜性疼痛症候群は、硬くなっている筋肉とは違う場所に痛みを起こすことがありますので、診断が難しい病気のひとつと言われています。
首や肩の筋肉の萎縮が、手に痛みをもたらすことなどがあるのです。
また、後述する手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)などとも似ているため、治療には筋筋膜性疼痛症候群に詳しい医師の診察を受けることが大切になります。
靭帯損傷(じんたい そんしょう)で手のひらが痛い?
手には骨と骨をつないで関節を支えている靭帯(じんたい)がたくさんあります。靭帯はたくさんの線維が束になった構造をしており、硬くて伸縮性は低く、線維が切れる(損傷する)と痛みがでます。
靭帯が損傷するのは、指や手首を無理に曲げたときや、何かに強く当たったときなどで、手のひらでは指の付け根の靭帯に損傷が多いと言われています。
靭帯が損傷していると、
患部を押すと痛い、
手や指を動かすと痛い、
腫れている
などの症状がでます。
靭帯の損傷を放置していると、不完全な状態でつながってしまうことがあるため、早めに整形外科などを受診することが大切です。
神経が圧迫される、手根管(しゅこんかん)症候群
手のひらの真ん中を通っている神経が圧迫されると、ある範囲に痛みやしびれがでます。
手の付け根あたりには、手の甲側にある骨と、手のひら側にある横手根(おうしゅこん)じん帯に囲まれた、管のような場所「手根管(しゅこんかん)」があり、正中神経(せいちゅうしんけい)という神経が通っています。
何らかの理由でこの管の中が狭くなると、正中神経が圧迫され、正中神経が伸びている領域に痛みやしびれの症状がでます。
これを「手根管症候群(しゅこんかん しょうこうぐん)」と言います。
正中神経が圧迫されるわけは?
正中神経が圧迫される原因には、次のようなことがあります。
- 親指の下にある母指球(ぼしきゅう)というふくらみの委縮
- 横手根(おうしゅこん)じん帯が分厚くなる
- 手首あたりの骨折
- 手根管にできた、できもの
- 血液透析(けつえき とうせき)による、靭帯や腱鞘への異常タンパク質の沈着
- 手根管の中を通る腱(けん)の膜が炎症を起こして、はれる
- 妊娠・出産期、更年期によるホルモンバランスの乱れが引き起こす、腱鞘(けんしょう)のむくみ
などです。
腱は、筋肉を骨につなぎとめている部分で、腱鞘(けんしょう)は腱を包んでいる鞘(さや)です。
手根管症候群の治療方法は?
手根管症候群が軽いうちは、装具などによる固定と手の安静、薬剤の注射などが有効とされています。進行すると手術で神経の圧迫を取り除くこともあります。
手根管症候群の診断には、神経の刺激伝達速度を調べる検査が行われたりします。
手根管症候群の特徴や症状には
手根管症候群では、上の図のように親指付け根の側面からくすり指の半分に痛みやしびれがでるのが特徴です。
ほかには、
感覚が鈍くなる、
ボタンを留める、おはしを使うなどの細かい作業ができない、
母指球がやせてくる
親指と人差し指で丸が作れない
手首を手のひら側に曲げると、しびれが強くなる
夜間や明け方に症状が強くなる
手根管あたりを叩くと、指にしびれや痛みがでる
などの症状や特徴があります。
痛みが持続する、CRPSってなに?
骨折や打撲などがきっかけで発症し、ケガが治っているにも関わらず痛みだけが残ったり、ケガの程度にしては痛みが強くでたりする病気がCRPS(複合性局所疼痛症候群:ふくごうせい きょくしょ とうつう しょうこうぐん)です。
手に症状が現れることが多いとされており、痛みのほかに次のようなものがあります。
- 皮膚が乾燥する
- 爪が割れたり、分厚くなったりする
- むくむ
- こわばる
- 赤くなる
などです。
自律神経の交感神経が関係して、痛みを起こす物質を作り続けているなどと考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
CRPSの治療方法は?
CRPSの治療方法は、それぞれの患者さんに合わせて、痛みを止める薬剤の使用やリハビリなどが行われます。
CRPSは本人にしかわからない、強い痛みを引き起こす病気です。CRPSという病気があることを知ったり、周りの人に知ってもらうことが、治療の第一歩かもしれませんね。
手のひらや手首周辺の骨折
手の骨折で多いのは、手のひらにある中手骨(ちゅうしゅこつ)という5本の骨や、手首近くにある骨のうち、舟の形に似ているとされる舟状骨(しゅうじょうこつ)です。
骨の成長期にある子供の場合は、骨の伸びしろ部「骨端線(こったんせん)」の損傷が多いと言われています。
転んだ際、手のひらで体を支えた時や
高いところから落ちて、手をぶつけたり、ひねったりした時
壁や人を殴った時
手のひらを踏まれた時
バイクで転倒した時
飛んできた硬いもの(ボールなど)を、手のひらで受け止めた時
などに骨折します。
中手骨(ちゅうしゅこつ)骨折の特徴は?
中手骨骨折は薬指と小指に多く、20~30代の人に多いと言われています。
押したときに痛みを感じたり、手の甲がはれたりするのが主な症状です。
骨折していない方の指と比べて、爪の向きが異なっている場合は、骨がずれたり、ねじれたりしていることがあります。
舟状骨(しゅうじょうこつ)の特徴は?
親指と人差し指で何かをつまんだり、舟状骨部分を側面から押したりしたときに痛みがでます。
手首近くは骨が入りくんでおりレントゲン撮影でも写りにくく、舟状骨骨折は痛みや腫れもそれほどではないため、気づかれないことも多いと言われています。
骨折の治療方法は?
手の骨折の治療は、ギプスやプレートなどを用いて固定するのが一般的で、骨のズレがある場合は、手術が行われることもあります。
舟状骨の骨折は、骨がくっつきにくいため、早期に治療を始めることが大切だとされています。
指の付け根が痛む、ばね指ってなに?
指の曲げ伸ばしを繰り返すうちに、腱(けん)と腱鞘(けんしょう)がすれて炎症を起こすと痛みがでます。
症状がでるのは、指の付け根であるMP関節が多く、腫れると腱鞘の中が窮屈になるので、スムーズな指の曲げ伸ばしができなくなります。
それはまるで「ばね」を付けられているような状態になることから、「ばね指」と呼ばれ、指を伸ばすときにひっかかりを感じたり、反対の手で伸ばさないと伸びなかったりすることもあります。
発症は、中年女性に多いと言われています。
ばね指の治療方法は?
ばね指の治療は、
塗り薬や飲み薬で炎症を静めたり、
装具で手を固定したりします。
ばね指を放置しておくと、関節が硬くなってしまうことがあるため注意が必要です。
腫れがめだつ、関節リウマチ・MP関節炎
ばね指と同じMP関節(指の付け根)が痛む病気に、関節リウマチやMP関節炎があります。
ばね指と違うところは、大きな腫れがあることや、ばね指のように伸ばすときに引っ掛かりは感じないことです。
関節リウマチの原因や特徴は?
関節リウマチは、遺伝的要因や免疫機能の異常があるとされ、手首に症状がでることもあります。
関節炎は細菌の侵入などが原因です。
関節リウマチは全身に起こりえますが、手のひらにあらわれる特徴は、
朝方のこわばり、
突然のはれ
腫れのせいで物がつかみにくい
などです。
関節リウマチ・MP関節炎の治療方法は?
関節リウマチやMP関節炎の治療は、早いほど効果があるとされています。
治療には、薬剤の服用やリハビリなどが行われますが、関節リウマチの治療は、専門医師がいる整形外科や膠原病内科などで診察を受けるのがいいでしょう。
MP関節炎は、後述する腱の損傷や断裂(だんれつ)との見分けがむつかしいと言われています。
指の曲げ伸ばしができない、腱の断裂
腱のあるところではどこでも、断裂が起こる恐れがあり、手のひらも例外ではありません。
痛みの出方はばね指と似ていますが、腱が断裂する(切れてしまう)と通常は、指の曲げ伸ばしができなくなります。
腱が断裂する原因は、つき指や骨折などです。
親指の付け根が痛む、母指CM関節症ってなに?
母指CM関節症(ぼししーえむ かんせつしょう)は、親指の付け根部分(母指CM関節)の軟骨がすり減り、炎症が起きたり、骨どうしが当たったりして痛みを引き起こします。
発症は中年の女性に多く、次のような特徴があります。
- 親指を動かすと痛い
- ものを握ったり、親指をひねったりすると痛い
- CM関節を押すと痛い
などです。
母指CM関節症の治療には、装具を用いて固定するほか、塗り薬や飲み薬で炎症を抑えたりします。
手のひらがしびれる、肘部管(ちゅうぶかん)症候群ってなに?
手のひらの薬指の半分から、小指あたり一帯にしびれを引き起こす病気が肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)です。
肘部管症候群が進行すると、次のような動作がしづらくなると言われています。
- 手を握る
- 指先で何かをつまむ
- 缶のふたを開ける
- おはしを使う
- 手で水をすくう
などです。
肘にある神経の圧迫が原因で、手のひらをはじめ、手の甲や指にしびれ、肘の内側に違和感などをもたらし、肘を曲げると痛みが強まったりします。
手のひらの小指の下にあるふくらみ「小指球(しょうしきゅう)」がやせることもあります。
肘部管症候群の治療方法は?
治療には、痛み止めの薬やビタミン剤の服用、装具での肘の固定などが行われます。
神経の伝達速度を測定する検査が、肘部管症候群の診断に利用されることもあります。
首が原因!?頸椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)ってなに?
首から手につながる神経が、首の骨(頸椎:けいつい)で圧迫され、手に痛みやしびれを起こすのが、頸椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)です。
首の骨にヘルニアや、骨棘(こっきょく)と呼ばれる小さな棘(とげ)状のでっぱりがあるときに神経が圧迫を受け、首をひねったり曲げたりしたことをきっかけに発症することが多いとされています。
手や指にしびれや、ヒリヒリした痛みをもたらしますが、その前に、後頭部や肩甲骨周辺が痛くなることが多いと言われています。
筋力の低下や、感覚の鈍化が起こることもあります。
頸椎症性神経根症の治療方法は?
頸椎症性神経根症は、悪い姿勢が原因になっていることが多く、姿勢の改善による治療が行われることもあり、痛みが強いときは薬剤などが用いられます。
悪化させないために、早めの受診が大切です。
手のひらに痛みをもたらす病気はたくさんあり、症状のでかたも人によって違いがあったりします。
手の病気だと思っていたのが、実は首の病気だった、ということも少なくありません。
症状を悪化させないためには自己判断をさけ、まずは診察を受ける、ということが大切です。
なるべく手の病気に詳しい医師がいる、整形外科などの受診がおすすめです。
まとめ
手のひらが痛い原因などについて見てきましたが、いかがでしたか。
手は痛みに敏感なところですし、いつもできていたことができなくなったりすると、不自由を感じるし、つらいですよね。
人にはなかなか分かってもらえない痛みもあります。
早く解決するためにも、痛みがひどくならないためにも、早めに受診することが大切です。
睡眠をしっかりとって、栄養バランスのとれた食事をすることも忘れないようにしてくださいね。