一口に下痢といっても、原因が腸の運動機能によるものだったり、大量の水分が腸に押し寄せてくることだったり、腸に炎症ができている場合など、さまざまなことがあるのです。
また、突然の発症の場合もありますし、ある特定の飲み物や食べ物が引き金になる場合もあります。
かなり激しい腹痛をともなう下痢の場合もありますよね。
今回は、下痢の原因について解説していきます。
この記事の目次
下痢の原因はなに?
腸は、飲食物の消化・吸収だけでなく、体内で生成される水分を吸収する役目があるのです。
その水分をうまく吸収できなかった時、大腸の中に大量の水分が残ってしまい、下痢を引き起こす、というわけなのです。
体内で生成される水分には、様々なものがあります。
食事で摂取したもの、唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などがあり、合わせると1日に9リットルもの量になるのです。
腸が正常に働いているときには、この9リットルを吸収することができるのですが、できなくなる原因には次のようなことがあると言われています。
- 胃や腸に入ってきたものを、出口へと追いやる動きが速すぎて、水分を吸収できない「ぜん動運動性下痢」
- 腸内に大量に水分が流れ込む「浸透圧性下痢(しんとうあつせいげり)」
- 腸の中に炎症があり、吸収能力が下がる「滲出性下痢(しんしゅつせいげり)」
- 腸液の分泌が増えてしまう「分泌性下痢(ぶんぴせいげり)」
- 薬の副作用
- 糖尿病や大腸がん
それでは、それぞれについて、さらに原因などを見ていきましょう。
「ぜん動運動性下痢」とは?
ぜん動運動とは、消化・吸収のための分節(ぶんせつ)運動とは異なり、腸などの中にあるものを 出口の方へと運ぶ動きのことです。
このぜん動運動を高ぶらせる作用があるものに、コーヒーなどの中に含まれるカフェインがあります。
ぜん動運動が激しくなれば、小腸でゆっくり水分が吸収できなくなり、大腸にたくさんの水分が流れ込んでしまうことになります。
その結果、水分の多い便、つまり下痢が起こってしまう、というわけなのです。
カフェインが原因の下痢の場合は、カフェインの摂取を控えることで、改善するでしょう。
カフェインを含むものはコーヒーのほかに、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ココア、コーラ、栄養ドリンクなどの飲み物、それにチョコレートなどがあります。
「浸透圧性下痢(しんとうあつせいげり)」とは?
腸内に大量の水分を引き込み、下痢を起こしてしまうのが、浸透圧性下痢と呼ばれるものです。浸透圧性下痢の原因になるものに、お酒(アルコール)があります。
お酒が下痢を起こすまでの経緯をご説明します。
大量のお酒の摂取はまず、胃酸から胃の中を保護している粘液を腸に流してしまいます。
粘膜が流れてしまうと、胃では胃酸が原因の、軽い潰瘍(かいよう)やただれができ、腹痛や胃痛、吐き気、嘔吐、吐血、血便などの症状が引き起こされることがあります。
胃酸の主成分は塩酸で、本来は消化を助けたり、体内に入ってきた微生物を殺菌する働きがあります。
次にお酒は腸に入り、糖や脂肪の分解・吸収を妨げ、消化不良を引き起こします。
糖や脂肪の分解には、肝臓でつくられる胆汁(たんじゅう)の助けが必要ですが、アルコールの分解を最優先にしている肝臓では、この胆汁の生成が十分にできないために、消化不良が起こるのです。
消化不良が起こると、水分や、浸透圧を調整する働きのある電解質の吸収も妨げられるので、腸には大量の水分が残り下痢が起こる、というわけなのです。
消化不良の原因はお酒のほかに、食後の胃酸の分泌の乱れや、ストレスなどがあります。
牛乳に含まれる乳糖もまた、大腸に水分を引き込む、浸透圧性下痢の原因としてあげられます。
乳糖を分解する酵素は、小腸から分泌されるのですが、年齢が増すごとに、分泌量がだんだん少なくなると言われています。
大人になってから牛乳で下痢をするようになった、という人が増えるのはこのためです。
ヨーグルトの乳酸菌は整腸作用があり、便秘がちの人には、便を促す効果がありますが、やはり乳糖が含まれていますので、下痢になることもあります。
「滲出性下痢(しんしゅつせいげり)」とは?
ノロウイルスやO-157といった、ウイルスや細菌などが腸に入ってくると、水分吸収をおこなっている上皮細胞が破壊され、炎症がおきてしまいます。炎症が起きてしまうと、水分が吸収されにくくなり、大腸には大量の水分が残ってしまい、下痢を引き起こすのです。
これを滲出性下痢(しんしゅつせいげり)と言い、腹痛や吐き気や嘔吐、発熱、血便をともなうこともあります。
「分泌性下痢(ぶんぴせいげり)」とは?
肝臓からの胆汁の量が増えたり、増えた胆汁の影響で、腸液の分泌が増えて下痢を起こすことがあり、これを分泌性下痢(ぶんぴせいげり)と言います。
分泌性下痢(ぶんぴせいげり)の原因は、細菌の毒素や、消化管ホルモンの影響ではないか、と考えられています。
その他の下痢
そのほかにも、抗生物質や抗がん剤など、薬の副作用や、大腸がんで下痢になるケースもあります。
副交感神経によりコントロールされている腸ですから、自律神経の乱れにより、過敏性腸症候群の下痢症状がでる場合もあります。
下痢の対処方法
説明してきたように、本来は吸収されるはずの水分が吸収されず、排出されてしまうのが下痢です。長引く下痢や激しい下痢は、体が脱水状態に陥ってしまうことがありますので、注意が必要なのです。
少し温めたスポーツドリンクや経口補水液をミネラルウォーターで割るなどして、少しずつ飲むようにして、脱水症対策をしていただければと思います。
また、下痢の原因により、下痢止め薬は服用しない方がいいケースがあります。
食中毒やウイルスが原因の場合、下痢を止めてしまうと、原因菌が排出されず、いつまでも腸の中に残ってしまうことになりますので、服用は避けた方がいいでしょう。
迷った時や心配なときは、薬局や医療機関などで相談してくださいね。
関連記事⇒「感染性胃腸炎、ウイルスの種類と注意することまとめ。」
まとめ
今回は、下痢の原因についてみてきましたが、いかがでしたか。
下痢の原因をおさらいすると、
- カフェインなどが原因で、腸の動きが激しくて水分の吸収が十分にできなくなる下痢
- お酒などが原因で消化不良を起こし、腸に水分が押し寄せて起こる下痢
- ウイルスなどが原因で腸に炎症が起こることで水分がたまる下痢
- 胆汁や腸液の分泌が増えてしまう下痢
- 薬の副作用や大腸がんによる下痢
などです。
また、個人の体質によって、特定のもので下痢を起こしてしまうこともあります。
下痢になる原因物質が、特定できる場合は、それを避けることによって下痢になるリスクを下げることができますが、長引く場合は医師の診察を受けられることをおすすめします。
下痢になるとお腹は痛くなるし、困ることも多いですからね。
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原因を知ることは大切ですよね(^^)