腸が痛い!といっても、一か所がキリキリ痛むのか、全体に張るような痛みがあるのかなどによって、考えられる原因には違いがあります。
また、腸の右?左?おへその周り?など、痛む場所によっても異なります。
今回は、腸が痛い原因について解説していきます。
下痢や便秘、ガスの異常などがないかも、注意してみることが大切です。
この記事の目次
腸が痛い原因は?
腸は場所により、それぞれに特有の不調を起こします。
図にあるように、腸の左下(向かって右側)は、肛門の手前で、カーブの多い部分ですので、たまった便が原因で不調が出やすいと言えます。
右側(向かって左側)には虫垂(盲腸)がありますし、重力に逆らって排泄物を上に運ばなければならない部分です。
便が横に移動する「横行結腸(おうこうけっちょう)」という部分では、垂れ下がると、ガスがたまりやすいと言われています。
それぞれの場所に出やすい病気を解説していきます。
腸の左が痛いのはなぜ?
おもに腸の左下が痛い、という場合に考えられる疾患には、次のようなものがあります。
- 大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)
- 腸閉塞(ちょうへいそく)
- 虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)
- 大腸がん
大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)
大腸憩室炎とは、大腸にできた憩室(けいしつ)というちょっとしたくぼみに、炎症が起きる病気です。
大腸憩室炎のおもな症状
大腸憩室炎の症状は、腸が痛い、というほかに、発熱、下痢、吐き気、赤黒い便、血便、下血(お尻から血が出ること)などがあります。まれに、憩室が破れて大出血を起こすことがあると言われています。
大腸憩室炎は右の上行結腸(じょうこうけっちょう)にもできることがあり、これをとくに、上行結腸憩室炎と言ったりします。
大腸憩室炎の原因は?
大腸憩室炎になる原因に、便秘が関係していると言われています。便秘がちな腸の中は、常に強い圧力がかかった状態になっていますので、腸の壁が薄くなっている部分に憩室ができてしまうのです。
腸閉塞(ちょうへいそく)
腸閉塞(ちょうへいそく)とは、腸がねじれて、ふさがってしまうことで、腸の左下にあるS字結腸(えすじけっちょう)で多く発生するといわれています。
激痛にともなって吐き気などの症状が現れることがあります。
腸閉塞に関することは、こちらで詳しく解説していますので、参照していただければと思います。
虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)
大腸の動脈がふさがってしまう疾患を、虚血性大腸炎といいます。
虚血性大腸炎ができる場所で多いのが、腸の左側にあるS状結腸や、下行結腸(かこうけっちょう)ですが、血流が乏しい場所では、 どこにでもできる性質をしています
虚血性大腸炎のおもな症状
虚血性大腸炎は、高齢者に多くみられる疾患で、突然の激しい痛みとともに、下血をともなうこともあると言われています。
虚血性大腸炎の原因は?
虚血性大腸炎は、心筋梗塞や脳梗塞と同じで、動脈硬化などが原因で、血管が詰まる疾患です。
大腸がん
大腸がんの中でも、左側にガンができるものを、左側大腸がんといい、大腸がんの内の70%が、この左側大腸がんと言われています。
大腸がんのおもな症状
大腸がんの症状は、腸が痛い、ということのほかに、吐き気や下痢、便秘、血便などをともなうことがあります。
便の色が赤黒くなったり、便が細くなったり、おならが少なくなることもあります。
大腸がんの原因は?
大腸がんは、食事の中に含まれる発がん性物質が、便秘などによって、腸の中に長くとどまることで、粘膜の遺伝子をキズをつけることが原因ではないか、と言われています。
腸の右が痛いのはなぜ?
おもに腸の右側が痛い、という場合に考えられる疾患には、次のようなものがあります。
- 右側大腸がん
- 虫垂炎
- クローン病
右側大腸がん
右側にできた大腸がんを、右側大腸がんと言い、左側にできるものよりも、腹痛や吐き気といった症状が出にくく、しこりが大きくなって初めて気づく、という場合もあります。
虫垂炎(ちゅうすいえん)
虫垂炎とは、俗にいう「盲腸(もうちょう)」のことで、腸の右下にある虫垂に、化膿性の炎症ができる疾患です。
虫垂炎のおもな症状
虫垂炎ははじめ、みぞおちや、おへそ周りが突然痛くなり、徐々に痛みが右下の虫垂に移動していく形で、症状が現れます。
虫垂のある右の下腹部を押すと、強い痛みを感じ、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振などをともなうこともあります。
虫垂炎の原因は?
虫垂炎は、不規則な生活や暴飲暴食が原因と考えられています。
クローン病
クローン病とは、腸内にできる肉芽腫(にくげしゅ)性の炎症です。
クローン病のおもな症状
クローン病は、腸の右下部分に痛みが出ることが多いですが、腸全体や小腸に痛みがでることもあり、発熱や下痢、食欲不振、体重減少などを伴ともなうこともあります。
比較的若い年齢層に多く見られると言われています。
クローン病の原因
クローン病の原因は、現在はっきりとはわかっていませんが、ストレスなどが原因で、免疫システムに異常がでたもの、と考えられています。
おへその周りが痛い!?
おもにおへその周りが痛い、という場合に考えられる疾患には、次のようなものがあります。
- 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)
過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)
腸の中に器質的な異常(病気)が見当たらないにも関わらず、症状がでるものを過敏性腸症候群といいます。
過敏性腸症候群の主な症状
過敏性腸症候群は、腸にキリキリとした痛みがあるのが特徴で、突然の強い便意と下痢、便秘、膨満感、吐き気、めまい、動悸、頭痛などの症状がでることもあります。
便に、大量の粘液が混ざっていることもあります。
また、垂れ下がった横行結腸にガスがたまって痛くなることもあります。
ガスによる腸の痛みに関しては、こちらで詳しく解説しています。
過敏性腸症候群の原因は?
過敏性腸症候群の原因は、主にストレスと考えられており、朝に症状が出ることが多いのが特徴です。
過敏性腸症候群の原因と考えられていることは、ほかにもあります。詳しくはこちらで解説しています。
腸がとにかく痛い!?
腸の全体、または様々なところに炎症が起きる疾患には、次のようなことが考えれえます。
- 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
- 感染性腸炎(かんせんせいちょうえん)
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
潰瘍性大腸炎とは、腸内の粘膜や粘膜の下層に広がる炎症です。免疫細胞が、異常な行動を起こし、大腸を攻撃してしまうことが原因、と考えられています。
潰瘍性大腸炎は、炎症が発生する場所によって、直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型などがあります。
潰瘍性大腸炎の主な症状
潰瘍性大腸炎は腸が痛い、というほかに、血便、発熱、体重の減少、貧血などを引き起こすと言われています。
便に粘液や膿が混ざることもあります。
感染性腸炎(かんせんせいちょうえん)
感染性腸炎とは、細菌やウイルス、寄生虫などの病原体に感染したことで、腸内に炎症がおこるものです。食後に痛み出した場合は、食べ物が原因の食中毒が疑われます。
感染性腸炎は、細菌やウイルス、寄生虫の違いにより、それぞれ固有の名前が付けられており、病原性大腸菌腸炎、サルモネラ腸炎、細菌性赤痢、キャンピロバクター腸炎、ウイルス性腸炎、寄生虫性腸炎などがあります。
感染性腸炎のおもな症状
感染性腸炎の症状は、腸が痛いというほかに、水様性の下痢、発熱、吐き気、血便、脱水症状などがあります。
下腹部が痛いのはなぜ?
腸ではありませんが、下腹部が痛くなる原因には次のようなことがあります。
- 子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)
- 卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)
- 骨盤内炎症性疾患(こつばんないえんしょうせいしっかん)
子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)
本来は、子宮に着床する受精卵が、卵管の中などに着床してしまうことを子宮外妊娠と言います。チクチクした痛みや、出血などの症状が現れ、妊娠を続けることはできない、と言われています。
卵巣茎捻転(らんそうけいねんてん)
卵巣がひっくり返って、両側にある靭帯がねじれてしまうことを卵巣茎捻転といい、下腹部に痛みが出るほか、熱が出ることがあると言われています。
卵巣がひっくり返るのは、卵巣に腫瘍(しゅよう)ができた重みが原因であったり、お腹に力を入れたり、体位を変えたはずみなどで起こる、と考えられています。
骨盤内炎症性疾患(こつばんないえんしょうせいしっかん)
おもに、性感染症にかかっている相手との性交で感染し、上部生殖器に炎症を起こすのが骨盤内炎症性疾患です。下腹部にうずくような痛みや、出血、分泌物が見られることがあると言われています。
自己判断で対処しないことが大切です。
腸が痛いときに考えられる病気を見てきましたが、ここで解説している症状や出やすい場所は、一般的なことに過ぎません。
気になることがあるときは、きちんと医師の診察を受けてくださいね。
まとめ
腸が痛くなる原因や病気には、さまざまなものがあります。
おさらいすると、
- 大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)
- 腸閉塞(ちょうへいそく)
- 虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)
- 大腸がん
- 虫垂炎
- クローン病
- 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)
- 潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
- 感染性腸炎(かんせんせいちょうえん)
などです。
腸の痛みが長引いていたり、少しでも気になる場合は、早めに医師の診察を受けられることをおすすめします。
最近は、大腸を専門に診てくれるところもありますので、行ってみてもいいかもしれませんね。