便秘、と一口に言っても、色々な症状や種類がありますよね。便秘の薬(下剤)にも、働き方や効果などの違いにより、さまざまな種類があります。
便秘の薬の中には、使い続けているうちに効かなくなり、便秘が悪化する恐れのあるものもあります。
便秘を上手に解消していくためには、薬も上手に使うことが大切です。
今回は便秘の薬について、選び方や種類、副作用などを解説していきます。
この記事の目次
便秘の薬、間違った使い方に要注意!
便秘の薬には、用いるのに望ましいとされる順番というものがあるのですが、残念ながら最も多く用いられている市販の便秘薬は、最終手段で用いるべきとされる便秘薬です。
最終手段で用いるべき便秘薬の副作用とは
最後に用いるべきとされる便秘薬は、使い続けているうちに、大腸黒皮症(だいちょうこくひしょう)という副作用が出て大腸の内側が黒くなり、神経もおかされ、腸の動きが鈍くなる恐れがあると言われています。
腸の動きが鈍くなってしまうと便秘が悪化して、病院でさらに強い薬を処方してもらわなければ便が出ない、なんていうことも考えられます。
最後に用いるべきとされる便秘薬は、比較的安価で、即効性がありますが、用いるには注意が必要なのです。
便秘薬はどんな順番で使うのが望ましいの?
では、用いるのに望ましいとされる、便秘薬を順番に見ていきましょう。
- 腸の内容物を膨張させて、腸を刺激する効果のある便秘薬
- これは、食物繊維を多く含む食べ物を食べて、便秘を解消しようとするのに似ています。
- 腸内に水分を引き込んで、便を柔らかくする効果のある便秘薬
- かたくなってしまった便を、やわらかくするための薬です。
- 大腸を直接刺激して、運動を起こさせる便秘薬
- これは腸を強く刺激し、動くように仕向けるための薬です。
それぞれについて、さらに詳しく解説していきます。
1.腸の内容物を膨張させて、腸を刺激する効果のある便秘薬
最初の便秘薬は、排便しやすくするために、便を柔らかくふくらませる、といったイメージです。
ただ、重症の便秘には効果があまり期待できないことと、お腹の張りを感じてしまうことなどがあります。
腸の内容物を膨張させる便秘薬の名前は?
腸の内容物を膨張させるタイプの便秘薬には、「ポリカルボフィルカルシウム」という成分の入った「ポリフル」や「コロネル」といった商品名の薬があります。残念ながら日本で市販されている薬はありません。
まだ便秘が軽いうちは、医師の診察を受けて処方してもらうのがいいでしょう。ジェネリック医薬品もあります。
妊娠中はなるべく使用しない方がいい、と言われているお薬です。
2.腸内に水分を引き込んで、便を柔らかくする効果のある便秘薬
腸の内容物を膨張させるタイプの便秘薬では便秘が解消しない、効かないという場合、次に試してみるのがいいと言われている便秘薬は、腸の中に水分を引き込んで便をやわらかくするタイプの便秘薬です。
水分を引き込む作用のあるものには次の3種類があり、それぞれに副作用や効果などが異なります。
- 塩類を使って水分を引き込む
- 糖類を使って水分を引き込む
- 腸管の粘膜に作用して、水分分泌を促す
塩類を使って水分を引き込む便秘薬
水分を呼び込む作用のある成分をお腹に入れることによって、便をやわらかくしようとするものに、「酸化マグネシウム」を成分とする塩類下剤(えんるいげざい)と呼ばれるものがあります。
塩類下剤は、投与量の調節がしやすく、保険適用のある薬ですので、病院などでもっともよく処方される薬のひとつです。腹痛などの副作用も、次に説明する「刺激性下剤(しげきせいげざい)」より起きにくいと言われています。
塩類下剤の副作用は?
塩類下剤の服用では、マグネシウムの処理に体がうまく対応できない場合に「高マグネシウム血症(けっしょう)」が起こり、脈が遅くなる除脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)などの症状が出る恐れがあると言われています。
腎臓機能や心臓機能が弱い方、高齢者などは服用に対し特に注意が必要です。
また、お腹の張りといった副作用がでることもあると言われています。
塩類下剤の薬の名前は?
塩類下剤には、「ヨシダ(旧マグラックス)」や「マグミット」という商品名の薬があります。妊娠中や授乳中の方に、病院で処方されることがあるお薬です。
市販されているもので、「酸化マグネシウム」が主成分という便秘薬はいくつかありますが、市販の薬を選ぶときは、ほかの成分や添加物もしっかりとチェックすることが大切です。のちほど詳しく解説していきますが、添加物の中には、腸を直接刺激する下剤の成分が入っているものもあります。
糖類を使って水分を引き込む便秘薬
糖類の「水分を腸に引き込む作用」を利用して便秘を解消しようというのが、「糖類下剤(とうるいげざい)」と呼ばれる便秘薬です。
糖類下剤によって腸の中につくりだされた有機酸や水素、メタンガスは、腸が便を出口へと運ぶ蠕動運動(ぜんどううんどう)も活発にする効果があると言われています。
糖類下剤の副作用は?
糖類下剤の目立った副作用はありませんが、重症の便秘改善には、効果が弱いとされています。
糖類下剤の薬の名前は?
糖類下剤には、「ラクツロース(商品名はモニラック)」と呼ばれる便秘薬があり、幼児や産後の妊婦さんなどに医療機関で処方されることがあります。通常の大人の便秘には、保険適用がありません。
市販のものでは、「ラクトスクロース」が主成分のものになりますが、便秘薬というよりは特定保健用食品などになります。「ラクトスクロース」はいわゆる「オリゴ糖」の一種です。
オリゴ糖の効果については、こちらで詳しく解説しています。
腸内に水分を分泌させて、便を柔らかくする効果のある便秘薬
塩類や糖類と作用は異なりますが、腸管に水分の分泌を増やして便を柔らかくし、便秘を解消しようとする便秘薬が「分泌型下剤(ぶんぴつがたげざい)」です。
分泌型下剤は即効性があるとして、使用頻度が高まっている便秘薬のひとつです。
分泌型下剤の副作用は?
分泌型下剤は、空腹時に服用すると、吐き気やおう吐が出やすいと言われています。比較的強力なので下痢になることもあります。
妊娠中や授乳中には使用しない便秘薬です。
分泌型下剤の薬の名前は?
分泌型下剤には、医療機関で処方される「ルビプロストン(商品名はアミティーザ)」と呼ばれる便秘薬があります。
ルビプロストンは、最近日本で認可された便秘薬なので、類似の市販品などは現在ありません。
3.大腸を直接刺激して運動を起こさせる便秘薬
これまで解説してきた便秘薬では便秘が解消されない!、という場合に選ばれるべきとされるのが、これから解説する大腸に直接刺激を与えて運動を起こさせ、便秘を解消しようという「刺激性下剤(しげきせいげざい)」で、大きく分けて2種類あります。
非常に強力な刺激性下剤
刺激性下剤の中でも非常に強力で、腹痛や下痢といった副作用が起こりやすいとされている便秘薬が「アントラキノン」という成分の入った「アントラキノン系刺激性下剤」と呼ばれるものです。
これまで解説してきた市販の便秘薬のほかに健康食品の中にも、添加物として含まれていることがありますので、注意が必要です。
アントラキノン系刺激性下剤の副作用は?
アントラキノン系刺激性下剤は、長期に服用することで大腸の内が黒くなり、腸の動きが鈍くなる恐れがある黒皮症(こくひしょう)などを発症することなどが知られています。
精神的依存性や、精神異常をきたすこともあると言われています。
妊娠中や授乳中は、基本的に用いない方がいい便秘薬です。子供には使いません。
アントラキノン系刺激性下剤の薬の名前は?
アントラキノン系刺激性下剤には、「センナ」「アローゼン」「プルゼニド」「セチロ」「大黄(ダイオウ)」などの商品名がついた便秘薬が、医療機関で処方されます。
市販の便秘薬では、大黄やセンノシド、センナ、アロエなどの成分が入ったものになります。楽天やアマゾンで、これらの成分名で検索するとたくさん出てきます。
液体で服用する大腸刺激性下剤
直接大腸を刺激するもうひとつの刺激性下剤は「ジフェノール誘導体薬剤(ゆうどうたいやくざい)」とよばれる便秘薬です。
ジフェノール誘導体薬剤の副作用は?
ジフェノール誘導体薬剤にも、腹痛やおう吐などの副作用が見られることがあると言われています。
妊娠中は服用しない方がいい便秘薬です。
ジフェノール誘導体薬剤の薬の名前は?
「ジフェノール誘導体薬剤」には、「ラキソベロン」という商品名の、液体の便秘薬があり、幼児から大人まで医療機関で処方されます。コップに入った水などに、決められた滴数だけを落として服用します。
市販の便秘薬では「ピコスルファートナトリウム水和物」という成分が入った便秘薬になりますが、液体のものは今のところありません。
座薬も刺激性下剤!?
座薬(ざやく)として用い、肛門のすぐ上にある直腸(ちょくちょう)を刺激する便秘薬にも刺激性のものがあります。「ビサコジル(商品名はテレミンソフト)」や「炭酸水素ナトリウム(商品名は新レシカルボン)」などで、医療機関で処方されます。
便秘ではないが、肛門の上に便がある場合などに、座薬が使われたりします。子どもに多い症状だと言われています。
ビサコジルなどは、市販の飲む便秘薬の成分としても使われています。
便秘薬は、安易に用いないようにしましょう
便秘はお腹が苦しく、すぐにでも解消したい症状のひとつですよね。実際、何日も出ていないような便秘の場合には、刺激の強い便秘薬が病院などで処方されることもあります。
でも、安易に用いるのは避けた方がいいのが便秘薬です。ついつい何気なく使っている間に神経がおかされ、お腹の動きが鈍くなってしまっては、せっかく便秘を解消しようとしているのに、逆効果になってしまうことがあるからです。
また、便秘の原因に、ほかの病気が関係していることもあります。
便秘薬を服用する前に、医療機関でいちど相談してみられることをおすすめします。
まとめ
便秘の薬について見てきましたが、いかがでしたか。
便秘の薬は種類も品数も多いので、いったいどれが自分に合っているのか選ぶとなると結構大変かもしれませんね。
そんなときは、
運動したり食べ物で便秘を解消したりする方向に、意識を変えるのもおすすめですよ。
薬に頼りだすとくせになりやすいですし、副作用も心配です。
食べ物の中には便秘を解消する効果のある、本当に優秀なものもあるのですよ。