BCAA(ビーシーエーエー)は必須アミノ酸の一種で、筋肉に多く存在し、運動・スポーツでの持久力やパフォーマンスの向上、筋力の維持などに貢献しています。
筋肉疲労や筋肉痛を予防・軽減する効果も期待されているため、食事やサプリメントでのBCAAの利用が研究・開発されています。
今回は、BCAAの効果や働き、サプリメントでの利用、効果的な飲み方などについて解説していきます。
BCAAがもつ、疲労感の軽減やダイエット効果も見逃せません。
この記事の目次
BCAAの効果や働きってなに?
BCAAは、筋肉に存在する必須(ひっす)アミノ酸の35%を占める重要なアミノ酸で、次のような効果や働きがあると言われています。
BCAAは、
- エネルギー源になる
- 運動・スポーツのパフォーマンスを維持する効果
- 筋肉をつくる・太くする効果
- 筋肉のダメージ(疲れ)・筋肉痛を回復、軽減する効果
- 疲労感・倦怠感(けんたいかん)を緩和する効果
- 肝臓の働きを助ける効果
などがあります。BCAAの効果を、くわしく見ていきます。
BCAAはエネルギー源になる
体を動かし、生命を維持するエネルギーは、おもに糖質(グルコース)と脂肪(脂肪酸)によって生み出されますが、糖質や脂肪が不足してくるとアミノ酸がエネルギー源として使われます。
また常に10%ほどのエネルギーは、アミノ酸がつくり出しているとも言われています。
ほとんどが筋肉の中にタンパク質として存在しているBCAAは、おもに運動時にそのタンパク質を分解して、筋肉に必要なエネルギーをつくり出しています。
アミノ酸は 炭素と 酸素、 水素、窒素(1部には硫黄も)などの元素が結びついてできた物質(化合物)で、元素の数や構造の違いなどで、自然界に200種類以上あるとされています。
アミノ酸については、「アミノ酸の効果とは」でくわしく解説していますので、良かったら参考にしてください。
筋肉のパフォーマンスを維持する効果
運動が長時間になれば、たくさんの筋肉タンパク質が分解されエネルギーとして使われますが、BCAAには「グルコースに変化して筋肉でエネルギーとなるアミノ酸(アラニンなど)」の材料になる、という性質もありますので、血糖値を維持する上でも、マラソンなど持久力が必要とされる運動時には欠かしたくない成分と言えます。
BCAAとタンパク質の理想的な摂取量とタイミング
筋トレやマラソンなどの激しい運動をする人は、一般的に必要とされるタンパク質の1.5~2倍の量を摂取するのがいいと言われています。
一般的なタンパク質の必要量は体重1㎏に対し1.1gですので、60㎏の人であれば1日に66g、1.5倍で99gということになります。
また、筋肉エネルギーの消耗をできるだけ抑え、運動やスポーツでバテないためには、BCAAを運動の20~30分前に2g以上補給するのが効果的だということが実験の結果により言われています。(糖質を補給しておくのも大切です。)
筋肉をつくる・太くする効果
体内には血中などを遊離しているBCAAもあり、特にロイシンにタンパク質の合成を促進する働きがあることがわかってきました。
BCAAの効果的な摂取バランス
ロイシンに合成する働きがあるからといって、ロイシンだけを多量に摂取すると、他のBCAA(バリン、イソロイシン)が不足状態におちいるとされています。
BCAAは3つをバランスよく摂取した方が有効で、イソロイシン、ロイシン、バリンをおよそ1:2:1にするのが望ましいと言われています。
食べ物の中で1:2:1に近い比率でBCAAを含むものに、次のような食べ物があります。(カッコ内は100g中のタンパク質含量です)
牛肉 1:1.8:1.0 (18.4g)
豚肉 1:1.6:1.1 (19.7g)
鶏卵 1:1.6:1.2 (12.3g)
マグロ 1:1.7:1.1 (28.3g)
小麦粉 1:2.0:1.1 (8.0g)
白米 1:2.0:1.5 (6.8g)
ちなみに母乳は1:1.9:1.1だと言われています。(100g中のタンパク質含量は1.1g)
タンパク質を合成し筋肉量が増えると基礎代謝が活性化されます。基礎代謝の活性は、メタボリックシンドロームや肥満などの改善、ダイエットに効果があります。
筋肉のダメージ(疲れ)・筋肉痛を回復、軽減する効果
運動やスポーツのあと、筋肉疲労や筋肉痛に見舞われることがあります。これは筋肉のタンパク質が分解・損傷され、アミノ酸が消耗したことによります。
筋肉痛は、運動、特にエキセントリックな運動(筋肉を伸ばすときにかかる力)により、筋繊維が損傷して起こり、修復には、タンパク質の材料となるアミノ酸と、タンパク質の合成を促進させる十分なBCAAが必要です。
BCAAなどの効果的な摂取により、筋損傷による炎症の軽減、タンパク質分解の抑制、タンパク質合成の促進効果があると考えられています。
筋肉のダメージを回復させるBCAAやタンパク質の効果的な摂取タイミング(時間)は、「 運動後すぐ」ということが、運動直後と運動後2時間の比較で明らかにされています。
また、運動前4~5gのBCAAの摂取が、翌日以降にあらわれる筋肉痛や筋肉疲労を軽減させる効果があるとする報告もあります。
疲労感を緩和する効果
激しい運動やスポーツ、または体を酷使する労働の後に、思考力の低下ややる気の低下が起きるのは、脳内に増えすぎたセロトニンが原因で「中枢性疲労(ちゅうすうせいひろう)」という脳が感じる疲れを引き起こし、放置すると免疫力の低下や睡眠不足、うつなどを引き起こす恐れがあると考えられています。
運動によってセロトニンが増えすぎるメカニズムには、2つの要因が考えられています。
運動による疲労感の原因は脂肪酸?
1つめの要因は、脂肪酸の増加です。
体を動かすエネルギー源として脂肪が使われることは述べましたが、脂肪は脂肪酸に分解され、血液中をアルブミンというたんぱく質に結合して運搬されます。
アルブミンは必須アミノ酸であるトリプトファンとも結合していますが、トリプトファンは増えた脂肪酸にアルブミンを奪われてフリーになるため脳へ入りやすくなり、多くのセロトニンを生成するというわけです。
運動による疲労感の原因はBCAAの減少?
セロトニンが増える2つめの要因は、血中BCAAの減少です。
トリプトファンとBCAAは同じトランスポーター(運び屋)を使って脳へ移動しますので、BCAAが減少する分、トリプトファンの脳への移動が増える、というわけです。
運動開始前のBCAAの補給が、セロトニンの脳内での蓄積を抑制し「脳が感じる疲れ」も軽減させる効果があるとする報告があります。
BCAAの輸液としての治療効果
BCAA以外の多くのアミノ酸は肝臓で代謝されタンパク質がつくられますので、肝臓機能の低下は、タンパク質不足やBCAAの代謝増加を招いてしまいます。
タンパク質が不足すると足がむくんだり、お腹に水がたまったりする「低アルブミン血症」の症状や、筋肉でのBCAA代謝増加による、筋肉の衰えなどがあらわれたりします。
血液中のBCAAも減りますので、「脳が感じる疲れ」で述べたようにトリプトファンが増えて脳に悪影響をおよぼすことも知られています。
肝臓病による症状を防ぐために、BCAAを多く含んだ栄養剤が使われることがあります。
BCAAのアルブミンの合成を促進させる効果
BCAAにはまた、アルブミンの合成を促進させる作用がありますので、肝硬変の改善や肝不全の進行抑制のほか、肝細胞がんの予防などにも期待が寄せられています。
BCAAは何に多く含まれている?
BCAAの様々な効果を見たところで、食事から2gのBCAAを摂取するために必要な食べ物を見ていきましょう。
BCAAは動物性タンパク質に多く含まれており、2g摂るためには
牛肉で約70g、
マグロで約40g(マグロの刺身で約4切れ分)、
鶏卵で2個、
牛乳ではコップ2杯程度
が必要とされています。
運動やスポーツの前では、サプリメントを利用する人も多いでしょう。
サプリメントでのBCAAの摂取、注意点や副作用は?
BCAAをサプリメントで摂取する際は、その有用性や安全性を十分調べてから利用されることをおすすめします。
BCAAはとても苦いので、甘味料やクエン酸などの酸を足して苦味を抑えているものが多いため、含有している材料をチェックすることが大切です。糖分がたくさん入ったアミノ酸飲料などの摂りすぎは、 体に害を及ぼすこともあるので注意が必要です。
また、BCAAをはじめとしたタンパク質を、食事の約45%以上摂取すると、吐き気や下痢などの副作用を起こすこともあると言われており、アンバランスな栄養摂取は体の正常な機能を狂わせる恐れがあります。
ロイシン、バリン、イソロイシンが豊富な食べ物は?
ロイシン、バリン、イソロイシンそれぞれが多く含まれる食べ物もチェックしておきましょう。
●ロイシン (数字は100g 中の含量です)
①カゼイン(牛乳に含まれるたんぱく質) 8.4g
②カツオ・かつお節 6.2g
③粉末状小麦たんぱく 5.4g
④乾燥湯葉(ゆば) 4.6g
⑤凍り(高野)豆腐 4.5g
⑥脱脂粉乳 3.3g
⑦いわし・しらす干し(半乾燥品) 3.1g
⑦シロザケ・すじこ 2.9g
⑧国産乾燥大豆 2.9g
⑩きなこ・全粒大豆 2.9g
●バリン (数字は100g 中の含量です)
①カゼイン(牛乳に含まれるたんぱく質) 5.9g
②カツオ・かつお節 4.4g
③粉末状小麦たんぱく 3.3g
④凍り(高野)豆腐 2.9g
⑤乾燥湯葉(ゆば) 2.8g
⑥豚・ゼラチン 2.5g
⑦甘海苔(あまのり)・干し海苔 2.4g
⑧シロザケ・すじこ 2.2g
⑨いわし・しらす干し(半乾燥品) 2.1g
⑩脱脂粉乳 2.1g
●イソロイシン (数字は100g 中の含量です)
①カゼイン(牛乳に含まれるたんぱく質) 4.9g
②カツオ・かつお節 3.8g
③粉末状小麦たんぱく 3.0g
④乾燥湯葉(ゆば) 2.8g
⑤凍り(高野)豆腐 2.8g
⑥シロザケ・すじこ 1.9g
⑦いわし・しらす干し(半乾燥品) 1.8g
⑧きな粉・全粒大豆 1.8g
⑨国産乾燥大豆 1.8g
⑩脱脂粉乳 1.8g
筋肉の修復には睡眠も大切です。
筋肉疲労や筋肉痛などでおこる筋肉の損傷を修復するためには、バランスのとれた栄養補給と十分な休息・睡眠は基本的に大切です。
睡眠中は成長ホルモンの分泌が高まり、タンパク質の合成が促進されるだけでなく、脳の疲れも取り除くと言われています。
まとめ
BCAAの効果や働きなどについて見てきましたがいかがでしたか。
BCAAがタンパク質を合成し、エネルギーになり、グルコースをも作っているというのは、おどろきですよね。
また、精神の安定にも関わっていますので過不足なく摂ってBCAAの効果を最大限に利用し、筋肉運動だけでなく、人生のパフォーマンスも向上させたいものです ^^)