膝に起こる病気には様々なものがあり、痛みの現れ方もいろいろですが、特に「膝を曲げると痛い。」という症状のある病気は3つあります。
膝を曲げることで筋肉によって骨が引っ張られたり、骨がすり減って炎症を起こしたりすることが原因です。
今回は膝を曲げたときに痛みがでやすい3つの膝の疾患について、痛みのでるメカニズムや発症しやすい人、対処の仕方などについて解説していきます。
この記事の目次
膝を曲げると痛い、原因はなに?
膝を曲げた時に痛い、という症状がでる原因には、次のことがあると言われています。
- 膝を曲げることで、筋肉が骨をひっぱる
- 膝の一部が炎症を起こし、膝を曲げることで痛みがでる
- 骨の端がすり減っている
骨が成長途中であったり、膝に強い衝撃がかかったり、どこか1カ所に負担がかかり続けたりすると膝は負傷しやすく、痛みがでたりします。
膝を曲げると痛い3つの原因について、くわしく見ていきましょう。
膝を曲げと筋肉が骨をひっぱる?
膝にある通称「お皿」の下には、骨と太ももからつながる筋肉のつなぎ目があり、膝を曲げることでつなぎ目が引っ張られて痛みがでます。
引っ張られるところは、下図に示したように
「脛(すね)の骨」と書く脛骨(けいこつ)と、
太ももからお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)を介してつながっている筋肉の端膝蓋腱(しつがいけん)
のつなぎ目である「脛骨粗面(けいこつそめん)」という場所です。
繰り返し引っ張られることで骨がでっぱったりします。
このような症状が出る膝の病気を「オスグッド・シュラッター病」といい、成長期の子供で、ボールをけるスポーツやジャンプするスポーツをする人に多く発症します。
そのほかに、
ホルモンの異常や、
膝の下をぶつけるなどの外傷、
血行不良などでも発症することがあると言われています。
血行不良は、姿勢や歩き方、脚のバランスが悪く、太ももに過度なストレスがかかって筋肉がかたくなることなどが原因です。
オスグッド・シュラッター病の治し方は?
押して痛かったり、炎症によって腫れたり、熱を持ったりしているときは安静にすることが大切です。炎症があるのに筋トレなどを行うと炎症が悪化することもあります。
オスグッド・シュラッター病は、早めに病院などで診察を受け、テーピングなどで正しく固定すれば治りも早いと言われています。
膝の一部が炎症を起こして痛い?
膝の内側には、筋肉の端である腱(けん)が集合している袋があり、炎症を起こすと膝を曲げたときなどに痛みがでます。
炎症が起きるところは下図にあるように、膝蓋骨(しつがいこつ)の内側4㎝ほど下で、出っ張っている骨の内部です。
太ももの内側や後ろ側から筋肉が集まり、その様子が鵞鳥(がちょう)の足に似ていることから鷲足(がそく)と呼ばれ、炎症が起こることを鷲足炎(がそくえん)と言います。
太もも後ろの筋肉(ハムストリングス)をよく使うスポーツをしたり、
ジャンプや方向転換をしたり、
急に運動を始めたりしたときに発症します。
鷲足炎の治し方は?
鷲足部あたりを押して痛みがでたり、腫れたり、熱を持ったりすることもありますが、整形外科などを早めに受診し、安静にしていれば軽快すると言われています。
痛みを我慢して放置していると、筋肉が緊張し、血行が悪くなるので治りが遅くなります。
骨の端がすり減るってどういうこと?
太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)と、脛骨(けいこつ)の端にある軟骨(なんこつ)がすり減ると痛みがでます。これを変形性ひざ関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)と言います。
膝には衝撃を吸収したり、なめらかに骨を動かしたりするための軟骨が、大腿骨と頚骨の端に4㎜ほどの厚さでついています。
軟骨と軟骨の間にはさらに半月板(はんげつばん)という、線維性の軟骨もあり膝を守っているのですが、衝撃が強すぎたり、力が一か所にかかり続けたりすると、軟骨がすり減ってしまうのです。
変形性ひざ関節症の痛みの原因は…
軟骨には神経も血管もありませんので、炎症を起こしたり痛みがでたりすることはないのですが、すり減った部分のかけらが、膝関節を包んでいる関節包の壁「滑膜(かつまく)」に触れることで炎症がおき痛みがでます。
炎症を止める治療をしてもなお痛みが治まらないという場合は、軟骨の一部が深く欠けたことで中の骨が傷つき、痛みを起こすこともあります。
変形性ひざ関節症で膝に水がたまる!?
変形性ひざ関節症では、膝を曲げたりしたときに痛みがでるほか、膝の上が膨らんだり、腫れて膝の曲げ伸ばしがしづらくなったりすることもあります。
関節包の中には滑液(かつえき)という粘り気のある液体が滑膜から分泌されており、軟骨に栄養を与えたりしていますが、炎症により滑液が通常よりも多く分泌され、関節包の中に30~50㏄ほどたまると、腫れているのが分かると言われています。いわゆる「膝に水がたまる」という状態です。
炎症がおさまれば、滑液の分泌は通常の量になり、たまっていた滑液も自然に血管に戻るとされています。
小さな棘が膝をロックする!?
膝が繰り返し衝撃を受けることで、軟骨の下にある骨の一部に小さな棘(とげ)のような「骨棘(こっきょく)」が形成されることもあります。
骨棘が大きくなると、膝を動かせる範囲が狭くなったり、痛みの原因になったりします。
変形性ひざ関節症を発症する人は…
中高年の約25~40%は変形性ひざ関節症を発症すると言われており、男性より女性、肥満の人、O脚の人に多いのが特徴です。
半月板の損傷が変形性ひざ感染症の原因になることも知られています。
変形性ひざ関節症の治し方は?
軟骨のすり減りを大きくしないためには、なるべく早く受診して治療を受けるとともに、正しい歩き方などのアドバイスを受けることが大切です。
痛いところをかばって歩くことでO脚がひどくなったり、痛くない方の足に負担が増えて筋力に差がつき体のゆがみをまねいたり、他の関節などに痛みや故障が起きたりすることがあるからです。
また、炎症が長引けば、関節包が線維化して痛みを感じやすくなるとも言われています。
膝を傷めないためには
膝が痛いときには安静と治療が大切ですが、痛みや故障がないときは、運動で筋力をつけることは重要なことです。
筋力が低下すると、少しつまずいただけで変形性関節症などが生じやすく、進行しやすいうえに、心臓や肺などの臓器の機能が低下する恐れもあります。
運動して筋力が強くなると、膝の安定性が増します。毎日続けられるウォーキングなどをおすすめします。
また、運動したあとのケアも大切です。
使った後の筋肉をそのままにしておくと、筋肉だけでなく関節や皮膚、靭帯、関節包、神経、脂肪などが徐々に硬くなり、機能を低下させてしまうのです。
できれば毎日、ストレッチやマッサージなどで筋肉や関節を柔らかくし、血行もよくして、栄養や酸素、水分が行きわたるようにしてくださいね。
まとめ
膝を曲げたときに痛みがでる主な病気について見てきましたが、いかがでしたか。
おさらいすると、
オスグッド・シュラッター病は、膝の下にある骨が引っ張られて痛みがでる病気。
鷲足炎(がそくえん)は、膝の内側にある腱の集合場所に炎症が起きる病気。
変形性ひざ関節症は、軟骨がすり減る病気です。
膝が痛くなる疾患は他にもありますし、腰や股関節の故障が膝に痛みを起こすこともあります。
自己判断はさけ、早めに整形外科などを受診してくださいね ^^)