首に痛みをもたらす原因には様々なことがあります。骨が変形していたり、じん帯が骨になっていたり、細菌に感染したり、筋肉が傷ついていたりとたくさんあります。
安静にしていれば自然に痛みがとれることもありますし、しっかり治療した方がいいこともあります。
首の真ん中にある大きな神経に影響がでて、首以外のところに症状がでることもあるので注意が必要です。
今回は、首が痛い原因について解説していきます。
痛む場所や、痛み以外の症状のほか、どんな時に痛いのか、どれくらい痛いのかなど、病気別の特徴なども参考にしていただければと思います。
この記事の目次
首が痛い原因はなに?
首は体重の10~15%ほどもある頭を乗せています。体重50㎏の人で、5~7.5㎏もありますね。
その頭が前に傾けば(下を向くと)、首の後ろ側の筋肉が頭をひっぱり、頭が後ろに傾けば(上を向くと)前や横の筋肉が頭を引っ張り支えます。
真ん中の骨は、硬い骨とやわらかい骨(軟骨:なんこつ)が交互に重なっています。そのため私たちは色んな方向に頭を動かすことができますが、列が乱れるとバランスが崩れ不安定になります。
そんな骨を、セロハンテープのように繋ぎとめているのがじん帯です。
骨は、関節という仕組みでもつながっています。関節はひざやひじに見られるように、動きの軸になるところで、骨の位置がずれると首が動かしにくくなります。首には17の関節があります。
首の骨には神経や血管を通すための孔(あな)があり、狭くなることもあります。
首が痛くなる原因には、次のようなたくさんのことがあります。
- 軟骨がつぶれる
- じん帯が骨になる
- 関節に結晶がたまる
- 腱(けん)に石灰ができる
- 感染している
- 関節リウマチにかかっている
- 骨折している
- 脱臼している
- 脊髄が傷んでいる
- 神経が圧迫されている
- 筋肉が傷んでいる
- できもの(しこり)ができている
などです。
それぞれについて、どんなところが痛み、どんな症状がでるのかなどを解説しますね。
軟骨がつぶれて首が痛い?
硬い骨にはさまれている軟骨(なんこつ)は「椎間板(ついかんばん)」と言い、
●首をいろんな方向に動かせる
●首にかかる力や重さを分散する
●衝撃をやわらげる
などの働きがあります。
首の痛みは、この椎間板がつぶれて始まることが多いのです。
◯椎間板がつぶれるとかさが低くなるので、関節では骨と骨がこすれて、炎症を起こします。
◯骨がこすれて骨棘(こっきょく)と呼ばれる棘(とげ)ができ、神経や血管、じん帯を傷つけることもあります。
◯でっぱった椎間板が神経を押します。
◯バランスをくずした首を支えるため、筋肉が疲労して筋肉痛を起こします。
◯首を支えるため、じん帯が太くなると、神経を圧迫します。
椎間板がつぶれることで生じる病気には、次のようなものがあります。
- 首の骨である頸椎(けいつい)が変形したという、「変形性頚椎症(へんけいせいけいついしょう)」
- 頸椎の椎間板が飛び出ているという意味の、「頸椎椎間板ヘルニア」
- 本来は少し前にカーブして並んでいる首の骨が、真っすぐに並ぶ「ストレートネック」
- 後ろにカーブしている「頸椎後弯症(こうわんしょう)」
おもに首の後ろが痛くなるほか、肩や肩甲骨、手、胸に痛みが広がることもあり、 横になっていると楽になるのが特徴です。
押して痛みがでたり、こりができたり、痛くて首を後ろに倒すことができなかったりすることもあります。
椎間板がつぶれて手足が痛い?
つぶれた椎間板が原因で、神経が伸びている先にも、痛みやしびれ、感覚のにぶり、筋力の低下などをもたらすことがあり、次のような病気があります。
◯頸椎の中を通る脊髄(せきずい)が障害される、「頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい せきずいしょう)」
◯脊髄が通る脊柱管(せきちゅうかん)が狭くなったという意味の「脊柱管狭窄症(きょうさくしょう)」
16㎜以上あれば正常とされている脊柱管の前後径が12~13㎜以下になると神経の圧迫による症状がでやすく、6~8㎜以下になると、手足のまひが起きやすいと言われています。
◯脊髄から左右に枝分かれしている神経の付け根が障害される「頚椎症性神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)」。
首の右側が痛いと右手がしびれるなど、同じ側に症状がでます。
◯交感神経が刺激される「バレー・リエウ症候群」。
自律神経症状の頭痛やめまい、耳鳴り、眼痛、目の前が急に暗くなる(暗黒感)、などがでます。
椎間板がつぶれる原因はなに?
椎間板がつぶれる原因には、次のようなことがあると言われています。
- 肉体労働などで繰り返される負担やストレス
- 遺伝的要因
- 喫煙
- 肥満
- 加齢
などです。
首が痛いときの治療方法は?
検査の結果、大きな異常がなく、症状が首の痛みだけの場合は、3か月ほど安静にしていれば、70%改善するとされています。
痛み止めや炎症を抑える薬の服用、電気療法、運動療法などが行われます。
顎を突き出した姿勢や長時間の悪い姿勢が、椎間板の変形を招きやすくすると言われていますので注意が必要です。
じん帯が骨になって首が痛い?
じん帯の一部が骨になり(骨化)、厚みが出て脊髄を押したり、関節の動きを制限したりして痛みを引き起こすことがあります。
脊髄と同じ脊柱管の中を通る後縦(こうじゅう)じん帯に生じることが多く、「頸椎後縦靭帯骨化症(けいつい こうじゅうじんたい こっかしょう)」と呼ばれます。
おもに首の後ろ側が痛くなり、手足がしびれたりすることもあります。
じん帯が骨化する原因には、次のようなことが考えられています。
●ホルモンやカルシウムの代謝(たいしゃ)異常
インスリンというホルモンが不足ぎみの人や、副甲状腺ホルモンが不足して副甲状腺機能低下症になっている人、ホルモンの過剰でビタミンD抵抗性くる病の人などに発症が多い
●遺伝
兄弟など家庭内での発症率が高い
頸椎後縦靭帯骨化症を発症している人は
50歳前後で、男性は女性の2倍多いとされています。
頸椎後縦靭帯骨化症の治療方法は?
頸椎後縦靭帯骨化症の治療では、首の痛みの程度により、痛み止め(鎮痛薬)や筋肉を緩める薬(筋弛緩薬)の活用、装具による首の固定、首を引っ張って神経の圧迫を軽くする頚椎牽引療法(けいついけんいんりょうほう)などが行われます。
マッサージや整体などは、医師に相談してからの方がいいと言われています。
首の痛みが頸椎後縦靭帯骨化症である場合は、症状が悪化しないよう、首を無理に後ろにそらしたり(上を向く)、転んだりしないように注意する必要があります。
首の関節に結晶がたまって痛い?
関節は関節包という袋に包まれているのですが、関節包にピロリン酸カルシウムという小さなかたまり(結晶)ができて炎症をおこし、激痛をもたらすことがあります。「頚椎偽痛風(けいつい ぎつうふう)」と言います。
首の上にあり、頭を左右に回転させるための関節に発生するため、痛くて首がまわらなくなります。
高齢の女性に多かったのですが、近年は若い人にもみられるとされています。
炎症を抑える薬や痛み止めなどで治療します。
首の腱に石灰がたまって痛い?
頸椎のすぐ前にある頸長筋(けいちょうきん)という筋肉の腱(けん)に石灰(酸化カルシウム)がたまり、組織を傷つけることで炎症を起こすものを「石灰沈着性頸長筋炎(せっかい ちんちゃくせい けいちょうきんけんえん)」と言います。
若年者から高齢者まで幅広く発症し、急に激痛がして、痛みで首が動かせなかったり、熱がでたり、飲み込みが困難になったりします。
血行の悪さや筋肉の使い過ぎなどが原因と考えられています。
治療は、炎症を抑える薬や安静のための装具などが用いられます。
感染で首が痛い?
体に入り込んだ細菌が、首で炎症を起こすものには、次のような感染症があります。
骨に感染すると、細菌が閉じ込められて治療が難しいこともあるので、早めの治療が大切です。
結核性脊椎炎(頸椎カリエス)
肺からの結核菌(けっかくきん)が背骨に感染して発症するのが、結核性脊椎炎(せきついえん)です。
頸椎におこるのはまれだと言われていますが、感染すると首や肩、背中に痛みやコリがでて、首を動かすと痛みが増します。
咽後膿瘍(いんごのうよう)
頸椎と喉の間にあるリンパ節に膿(うみ)がたまってしまう咽後膿瘍(いんごのうよう)は、子供では熱が出て喉が腫れ、物の飲み込みや呼吸が困難になります。
大人は、首を動かすと強く痛みます。
発症する大人は、50歳以上の中高年で糖尿病をわずらっている人に多いと言われています。
頸椎化膿性脊椎炎
頸椎や椎間板の組織を壊す感染症が「頸椎化膿性脊椎炎(けいつい かのうせい せきついえん)」というまれな病気です。
免疫力が低下している人や糖尿病をわずらっている人にみられ、首の痛みや発熱の症状がでます。
安静と抗菌薬の服用などで治療します。
関節リウマチで首が痛い?
免疫細胞が異常行動を起こし、関節包の膜に炎症を起こす「関節リウマチ」が、首に発症することもありますが、すでに手足の関節に痛みやこわばりといった症状が出ていることが多いとされています。
30~50代での発症が多く、朝起きた時に首の張りを感じたりします。
関節リウマチは、専門の医師にかかるのがいいとされており、薬物療法を中心に進められます。
骨折で首が痛い?
首に生じる骨折は、骨がもろくなっている場合と、ラグビーやアメフトなど、ぶつかり合うスポーツで首に大きな力が加わった場合とがあります。
激痛で動けないことが多いですが、押したら痛い、ということもあります。
神経に影響がでないように、素早く首を固定して安静にすることが大切です。
脱臼で首が痛い?
関節で骨の位置がずれることを脱臼(だっきゅう)といい、首で脱臼がおきやすいのは、首の上の方です。
頭蓋骨(ずがいこつ)との関節があり、うなずくなどの小さな前後の動きや、頭を左右に回転させる動きなどを担っています。
脱臼するとおもに首の後ろ側が痛くなり、首を動かすと痛みが増します。
脳に近いこともあり、めまいや頭痛、呼吸困難などを引き起こすこともあります。
脱臼が起きる原因は、
- 外からの強い衝撃、
- 関節リウマチ、
- 感染症、
- 姿勢の悪さ
などがあると言われています。
治療は安静が第一で、装具での固定や、ズレを治すための牽引(けんいん)などが行われます。
脊髄が損傷して首が痛い?
交通事故などで首が前後に大きく強くうねったりしたとき発症するものに、むち打ち症などがあります。
首の大きなうねりが脊髄にストレスを与え、症状を引き起こすと考えられており、筋肉やじん帯、椎間板、関節、血管などを傷めることもあります。
プールに飛び込んだ時などにも生じて、あとになって痛くなり、頭痛やめまい、耳鳴り、飲み込み障害、あごの痛みなどをともなうこともあります。
外傷性頸部症候群の治療方法は?
骨折や脱臼などがなければ、1か月くらいで改善するといわれています。
痛み止めや筋肉を緩める薬、湿布などが処方されることもあります。
神経が圧迫されて筋肉がやせる?
特に首の下の方にある神経根が圧迫されて、筋肉がやせる病気が「頚椎症性筋萎縮症(けいついしょうせい きんいしゅくしょう)」です。
原因はじん帯の骨化などが言われていますが、よくわかっていません。
首が痛くなった後、急に肩の筋肉に麻痺(まひ)がでて肩が上がらない、肘が曲げられない、などの症状がでます。
自然に改善することもありますが、頸椎牽引法や手術が必要なこともあります。
筋肉が傷んで首が痛い?
首を傾けてじっとしていると、特定の筋肉に緊張状態が続き、血行障害を起こして「突発性頸項痛(とっぱつせい けいこうつう)」が生じます。
血行障害は酸素不足を招き、不完全な代謝による老廃物を発生させます。その老廃物が神経を刺激して痛みを引き起こすのです。
寝ているときに起きれば「寝違え」と言われ、寝返りをうてないくらい疲れがたまって寝ている時や、酔って寝た時などに多いです。
筋肉痛のようなものなので、熱をもっているときは冷やすなどして安静にしていると、数日で改善すると言われています。
筆者の経験ですが、いつもとは反対の方に首から鞄をぶら下げたことが原因で、首がまわらないくらい痛い思いをしたことがあります。
日ごろ使っていない筋肉を使ったことが原因ではないかと考えられます。
ひとつの参考にしていただければと思います。
首にデキモノができて痛い?
首にできもの(腫瘍:しゅよう)ができると、良性でも悪性でも激痛や夜間の痛みを生じることがあります。
良性の場合は、脂肪や神経細胞、血管組織などのかたまりです。
悪性の場合は転移がほとんどで、熱が出たり、体重が減ったり、寝汗をかいたりすると言われています。
どの医療機関に行こうか迷ったときは、かかりつけ医に相談したり、頚部外科や口腔外科、耳鼻咽喉科、整形外科などがいいでしょう。
自己判断は禁物です
首に痛みを起こす原因はたくさんありますし、いろんなことが重なっている場合もあります。
人それぞれに体質も症状の出方も異なることが多いものです。
痛みを感じたときは自己判断はさけて整形外科などで診察を受けられるなど、早めに対処されることをおすすめします。
まとめ
首に生じる痛みについて見てきましたがいかがでしたか。
首は、脳に血液を送る血管が通り、信号のやり取りをする神経も通っています。よく動く重たい頭を支えるために、靭帯も筋肉も関節もたくさんあります。
首に起こる痛みは、首を長く健康に保つためにでているサインなのかもしれません。
なるべく負担のかからないように首を含めた全身の姿勢に気をつけたり、血流を妨げないように筋肉を柔軟にしたりすることも大切ですね ^^)