首に生じるリンパ節の腫れやしこりは、場所によってある程度、原因を推測することができるのをご存知ですか。
首には多くのリンパ節があり、内臓からの異物も運ばれてくるのですが、通るルートが決まっているのです。
今回は、首にあるリンパ節の場所やリンパ液の通り道、腫れやしこりが現れる頻度の高い病気などについて解説していきます。
この記事の目次
首にあるリンパ節の場所は?
リンパ節は、リンパ液の通り道である「リンパ管」の途中にあって、細菌などを処理するところです。
からだ中にある「毛細リンパ管」から集められた液体(リンパ液)の中に、細菌やウイルスなどがいれば、リンパ節に運ばれます。
リンパ節では細菌と、体を守る免疫細胞(めんえきさいぼう)の両方が戦いのために数を増やすので、リンパ節が大きくなる、腫れるというわけです。
このとき、血管からも免疫細胞が集まってくるために血流が増えて、皮膚が赤くなったり、熱をもったりすることもあります。
リンパ節の腫れる場所で原因がわかるの?
首のどこが腫れているかということは、原因を探るひとつの手掛かりになることがあります。
首の付け根にはリンパ管のゴールとも言える静脈との合流地点(静脈角)があり、リンパ液はそこに向かって合流を繰り返し、集まってきます。
下半身と左上半身のリンパは、胸の中央を通っている胸管(きょうかん)に集まり、左の鎖骨内側にある静脈角に、
右上半身のリンパは右の鎖骨内側にある静脈角に流れていきます。
首のリンパ節が腫れる場所と病気
首のリンパ節が腫れる場所によって、どんな病気がより疑わしいのか見ていきましょう。
首の横が腫れやすい病気って?
首の左右両側には静脈に沿ってたくさんのリンパ節があり、腫れやすい病気には次のようなものがあります。
- 風邪、喉の感染症
- 伝染性単核症(でんせんせい たんかくしょう)
- 亜急性壊死性(あきゅうせい えしせい)リンパ節炎
- 結核
- 悪性リンパ腫
などです。
顎(あご)の下が腫れやすい病気って?
首の上で顎の下あたりが腫れている場合は、
- 歯ぐきの炎症や口内炎
- 舌癌(ぜつがん)
などが疑われます。
耳の前後が腫れやすい病気って?
首の上で、耳の後ろや前は、
- 首周辺の傷口などから侵入した細菌などによる感染症
- 風疹(ふうしん)
などです。
首の後ろが腫れやすい病気って?
首の後ろ、後頭部で髪の生え際あたりが腫れているときは、
- 頭皮に生じる感染症
などが現れやすいと言われています。
首の付け根が腫れやすい病気って?
首の付け根で、左側の鎖骨あたりの腫れやしこりは、胃がんや肺がんなどの転移が疑われたりします。
聞きなれない病名もあると思うので、少し解説していきます。
首の横が腫れる伝染性単核症ってなに?
伝染性単核症(でんせんせい たんかくしょう)とは、EBウイルスというウイルスに感染して発症する病気です。
EBウイルスには約80%の人が3歳までに感染しており、無症状で終わることが多いのですが、10~20歳代で初めて感染すると伝染性単核症を発症することがあります。
リンパ節が腫れるほかには、のどの痛み、扁桃腺の腫れ、1~2週間続く38℃以上の熱などが特徴です。
まぶたの腫れや関節痛、発疹がでる人もいます。
伝染性単核症の治療は安静が第一で、薬によってはアレルギー反応を起こし、発疹が出ることもありますので、適当に服用しないよう注意し、医療機関を受診しましょう。
伝染性単核症と同じような症状がでて、首のリンパ節が腫れる感染症に「サイトメガロウイルス」によるものもあります。
首の横が腫れる亜急性壊死性リンパ節炎ってなに?
亜急性壊死性(あきゅうせい えしせい)リンパ節炎は、押すと痛みのあるリンパ節の腫れと、風邪のような症状がでる病気です。
1~3か月くらい続くこともありますが、自然治癒することが多いと言われています。
原因は不明で10~30歳代の女性に多いとされています。
首の横が腫れる結核ってなに?
肺で悪さをすることが知られている結核菌ですが、首のリンパ節で炎症を起こすことがあります。
数個のリンパ節が腫れることもあり、痛みがでて、硬いしこりになる場合や、膿を形成する場合などがあります。
結核の治療はおもに、薬剤が用いられます。
首の横が腫れる悪性リンパ腫ってなに?
悪性リンパ腫とは、ある種の細胞がリンパ節などにとどまって数を増やし、しこりをつくる病気で、進行すると臓器が機能不全を起こしたりします。
悪性リンパ腫は、次のような症状がでるとされています。
- 38℃以上の発熱
- 大量の寝汗
- 半年で10%以上の体重減少
- 皮膚のかゆみ
- リンパ節の腫れ(痛みはなく、弾力と硬さがあり、触ると動く)
リンパ腫にはさまざまな種類があり、飲酒後に腫れが大きくなって痛む、というものもあります。
いずれにしても診断には、血液検査や尿検査、画像検査、ウイルス検査、リンパ節生検等々の検査が必要です。
耳の後が腫れる風疹ってなに?
首にあるリンパ節の腫れで最も多い原因は、ウイルスなどによる感染症で、特に耳の後ろや前で炎症を起こし、発熱をともなうことも多いとされています。
ウイルス感染症の一種である風疹(ふうしん)も、 耳の後ろにあるリンパ節が腫れて痛むのが特徴です。
子供のうちにかかる風疹は、2~3日で治癒することが多いですが、大人がかかるともう少し大変で、全身にでる小さな発疹や発熱が3~5日くらい続くこともあります。
のどの痛みやせき、頭痛、関節痛など、風邪に似た症状がでることもあります。
腫れの大きさや硬さで原因がわかるの?
リンパ節の腫れ(しこり)は、原因によって次のような特徴があるとされています。
◯感染症による腫れ
- 大きさは1㎝前後
- 柔らかい
- 押すと痛みがある
- 手で動かすと場所を変える
- 赤くなったり、熱を持ったりすることもある
◯悪性リンパ腫による腫れ
- 大きさは2㎝以上
- 弾力性があり少し硬い
- 押しても痛くない
- 手で動かすと場所を変える
◯がんの転移によるリンパ節の腫れ(しこり)
- 大きさは2㎝以上
- 硬い
- 痛みはない
- 癒着(ゆちゃく)のため、手で動かそうとしても動かない
これらが一つの目安とされています。
リンパ節の腫れは、リンパ球からのサイン!?
私たちの体には、外敵などから身を守るための機能がたくさんあり、リンパ組織もその一つです。
外敵を攻撃する過程で熱が出たり痛みがでたりして、しんどいこともありますが、そんなときは安静にして、免疫細胞が働きやすい環境を整えることが大切です。
首はリンパ節の腫れに気づきやすいところでもあります。異変に気づいたら自己判断をさけ、なるべく早く診察を受けられることもおすすめします。
何科に行けばいいか迷われたときは、15歳くらいまでの子供は小児科へ、大人は内科などへ行かれるのがいいでしょう。
まとめ
腫れを起こす原因などをみてきましたが、解説した病気は頻度が高いとされているものに過ぎません。あなたの原因を突き止めるためには、しっかりと診てもらう必要があります。
首以外にリンパ節の腫れがないかどうか、他に気になる症状はないかどうか、いつから腫れているのか、なども大切なことですので、受診の際にはしっかりと医師に伝えてくださいね ^^