好中球が少ない原因には、血液の病気やウイルスによる感染症、膠原病(こうげんびょう)、肝臓の病気、薬の影響など様々なことがあります。
好中球が減るのとは逆にリンパ球が増えたり、赤血球などほかの血球も減ったりしている事が、原因究明の参考になることもあります。
今回は、白血球の1つ、好中球が少ない原因や数値について解説していきます。
赤ちゃんに特有の症状なども参考にしていただければと思います。
この記事の目次
好中球が少ない、ってどれくらい?
好中球は通常、白血球全体の40~70%ほどの量があり、健康診断などの血液検査でも、白血球全体に対する比率で表わされていることが多いです。
血液中の好中球数を知るには【白血球の数】に【比率】をかければでます。
上の筆者の例では、2800(白血球数)×0.404(好中球の比率)=1132.008で、血液1μℓ(マイクロリットル)中に1132個の好中球がある、ということになります。(この時はちょっと少なかったですね。)
一般的に1500個/μℓ 未満くらいから、少ないとみなされます。
ここからは、どんな時に好中球が少なくなるのか解説していきます。
好中球が少ない原因ってなに?
好中球は、薬剤や病気などが原因で少なくなることがあります。また好中球の減少が病気を引き起こすこともあります。
薬剤では、抗がん剤や抗甲状腺薬などが言われており、病気には、次のようなものがあります。
- 血液が作られにくい、再生不良性貧血(さいせい ふりょうせい ひんけつ)
- 正常な血液ができにくい、骨髄異形成症候群(こつずい いけいせい しょうこうぐん)
- 感染症(特にウイルス)
- 免疫細胞が異常行動を起こす、全身性エステマトーデス
- 肝臓の病気、肝硬変(かんこうへん)
などです。
好中球の減少を引き起こすそれぞれの病気について、少し詳しくみていきましょう。
好中球が少ないのは、再生不良性貧血が原因?
再生不良性貧血(さいせい ふりょうせい ひんけつ)とは、好中球などの「血球の元になる細胞(造血幹細胞)」が減少する病気です。生まれつきの場合とそうでない場合があり、突然発症する原因不明のものが全体の80%を占めています。
残り20%には、抗がん剤などの薬剤、放射線、化学物質、妊娠、肝炎、生まれつきのファンコニ(Fanconi)貧血や先天性角化不全症(せんてんせい かくか ふぜんしょう)などが原因と言われています。
赤ちゃんの好中球が少ない原因?
「ファンコニ(Fanconi)貧血」は、幼児期から血球が減少し、皮膚の色素沈着、低身長、身体奇形、性腺機能不全などをともなうことがあります。
「先天性角化不全症」は、爪の萎縮、口内の白斑、皮膚の色素沈着の3つを特徴とする、生まれつき血球が作られにくい症候群です。
ファンコニ貧血と先天性角化不全症の治療は、「造血幹細胞の移植」に効果が期待されています。
リンパ球の比率が高くなる!?
再生不良性貧血では、血球の大部分を占める赤血球や血小板も減少し、白血球も減少するのですが、おもに好中球が減少するため、リンパ球の比率が高くなります。
次の2項目以上が当てはまれば、軽度の再生不良性貧血が疑われるとされています。
- 好中球:1500/μℓ 未満
- 血小板:10万/μℓ 未満(世界基準では5万未満)
- ヘモグロビン:10g/㎗ 未満
血球は、骨の中の骨髄(こつずい)というところで作られるため、MRI検査や骨髄検査が行われることもあります。
再生不良性貧血の症状は?
再生不良性貧血では、めまいや動悸、疲労感、息切れなどの貧血症状のほか、出血を止める働きがある血小板が減るため、
- 血が止まりにくい
- 皮膚に点状の内出血
- 鼻血
などがあったり、
細菌を食べる好中球が減るため、
感染症にかかり 熱が出やすくなったりすると言われています。
再生不良性貧血の治療は?
免疫細胞のひとつ、リンパ球のT細胞が造血幹細胞を障害するのが発症原因のひとつ、と考えられており、免疫力を抑える薬が効果的に働くことがあります。
好中球が少ないのは、骨髄異形成症候群が原因?
骨髄異形成症候群(こつずい いけいせい しょうこうぐん)とは、形態や機能に異常のある造血幹細胞(血球の元になる細胞)が増えて、骨髄(こつずい)で正常な血球が作りにくくなる病気です。
赤血球や血小板の数値も減少傾向にあり、血球の詳細な検査では、異常な形の好中球が観察されたりします。
発症は中高年が多く、抗がん剤などの薬剤や放射線療法の影響で発症するものと、原因のわからないものがあります。
骨髄異形成症候群の症状は?
骨髄異形成症候群の症状は、再生不良性貧血と同じように貧血の症状、出血が止まりにくい、感染症になりやすい、ということがありますが、無症状のことも多く、血液検査などで偶然発見されることがあります。
皮膚に、痛みをともなう小さな発疹ができることもあります。
骨髄異形成症候群の治療方法は?
骨髄異形成症候群は急性骨髄性白血病(きゅうせい こつずいせい はっけつびょう)に移行することがあり、移行のしやすさ(リスク)や年齢などによって、経過観察から造血幹細胞の移植まで、様々な方法がとられます。
好中球が少ないのは、感染症が原因?
好中球が少なくなる原因のひとつに感染症もあり、特にウイルスによるものが多いと言われています。
ウイルス感染症には、風邪やインフルエンザ、ヘルペスウイルス感染症、ノロウイルス感染症、肝炎などたくさんあります。
乳幼児が感染しやすいものに「突発性発疹」や「ロタウイルス感染症」「おたふくかぜ」などがあります。
感染症では、それぞれに異なる症状もありますが、喉が痛くなることが多いようです。
好中球が少ないのは、全身性エステマトーデスが原因?
全身性エステマトーデスとは、外敵を攻撃するはずの免疫細胞が、体を攻撃することで発症する「膠原病(こうげんびょう)」の一種で、好中球を破壊し様々な症状を引き起こします。
全身症状の発熱のほかに
顔面に腫れをともなう紅斑、体幹や手足、足裏などに円板状の発疹、日光による皮膚のただれ、脱毛などを引き起こすことがあります。
診断には、次の項目も参考にされます。
- 白血球 4000個/μℓ 未満が2回以上観察される
- リンパ球 1500個/μℓ 未満が2回以上観察される
- 血小板 10万個/μℓ 未満
発症は20~40歳の女性に多いとされています。
好中球が少ないのは、肝硬変が原因?
肝硬変をわずらっている人は、好中球が少ないことが知られており、感染症にかかりやすいと言われています。
肝臓が硬くなると、肝臓に血液を送っている脾臓(ひぞう)に血液がたまり、腫れて大きくなります。
腫れて大きくなった脾臓には、赤血球が多く取り込まれたり、好中球などが破壊されたりするのです。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、かなり悪くなってから、気づかれることが多いとされています。
血液検査で「ALT」や「ALP」「γ(ガンマ)ーGTP」の値が参考標準値を超えている場合に、肝障害が疑われます。
くわしい内容については、「肝臓の機能低下について」で解説していますので、参考にしていただければと思います。
好中球の働きってなに?
好中球は普段、血液中を循環しており、体が細菌に感染したことを知ると、真っ先に応援に駆け付け、細菌を食べて殺菌します。
好中球は「食細胞」と呼ばれ、細菌を食べて死んだ好中球の死骸が膿(うみ)になります。
まとめ
好中球が少ない原因や数値の見方などをみてきましたが、いかがでしたか。
血液検査で好中球の数値が低かったりすると心配ですね。
しばらくは生ものを避けた方がいいかもしれません。
まれに健康な人の中にも好中球が少ない、という人がいますが、まずは少ない原因を調べてもらうことが大切ですね。