「私は大工です」と「私が大工です」。
2つの文に使われている「は」、「が」にはどんな違いや働きがあるのでしょうか。
使い方を間違えると、意思がうまく伝わらなかったり、誤解を招いたりすることがあるかもしれません。しっかり理解しておきたいですね。
今回は日本語助詞の「は」と「が」について、違いや使い分けなどを、例文を使って解説していきます。
この記事の目次
「は」と「が」の違い
「は」の使い方
「私は大工です」という時の「は」には、次のような意味合いがあります。
- 他の人のことはわからないが (私は大工です)
つまり、この場合の「は」には、
- 他と比べ、他を退ける
- 多くのものの中から取り立てる
という意識が加えられています。
ほかの例文も見てみましょう。
佐藤さんはあの人です。
(このレストランの他の料理はわからないが) グラタンはおいしいです。
(ほかの言語も勉強しているが) 英語は得意です。
(他の人のことはわからないが) 彼女はよく働きます。
「は」の前に置かれる語(「佐藤さん」や、「グラタン」)は<主題>や<題目>と呼ばれます。
<主題を示す働き>のある(主題に係る)「は」は、係助詞(かかりじょし/けいじょし)といいます。
(品詞名は、研究者によって異なることがあります。また、文中での働きによって、係助詞とならないことがあります。)
「が」の使い方は?
「私が大工です」の「が」には
- 主語のすぐ後ろにつく
- 状態主や動作主を示す
という働きがあります。
「彼女が道路を渡ったのを見た」の場合、
彼女は「道路を渡った」のでしょうか、それとも「見た」のでしょうか。
答えは「道路を渡った」です。
「が」のすぐ後にある「道路を渡った」が、彼女(動作主)が行ったこと、になります。
このように使う「が」は格助詞(かくしょじ)と呼ばれます。
「格」には、<きまりや法則>という意味があり、格助詞には、<事柄のつながりを表す>という働きがあります。
これに対して「彼女は道路を渡ったのを見た」の場合はどうでしょう。
彼女のおこなったことは「(◯◯が道路を渡ったのを)見た」 です。
「は」は、離れたところにある述語に係る(かかる)こともあります。
「が」の使い方2
「が」は、しばしば質問に対する答えや、問いかけの中に使われます。
「誰がこのクラスの学級委員ですか」の問いかけに対して、
「花子さんが学級委員です」のように使います。
「花子さんは学級委員です」とは言いません。
ここで大切なことは、
「誰がこのクラスの学級委員ですか」の質問の中には、<このクラスの中に学級委員がいることは わかっている>という前提があるということです。
「が」には、前提がある中で、答えを特定する・焦点を絞る・強調する働きがあるといえます。
「今まで見た中でどの映画がよかったですか」
「今まで行った中でどの国が好きですか」
などと使います。
他の例文も見てみましょう。
「誰が食べましたか」(話し言葉では「が」が強く発音されます)
「彼が食べました」
「あなたが壁に落書きをしたのですね」
「が」と「は」の使い分け
「雪が降った」
「雪は降った」
のような場合、「が」と「は」の違いを次のように言うこともできます。
●「が」は、<物事のありようのみを述べる>
「家の前に犬がいる」
「冷蔵庫の中にプリンがある」
なども同じです。
一方「は」は、<物事のありようを説明するという、話し手の意向がある>
「犬は家の前にいる」
「プリンは冷蔵庫の中にある」
のように。
では、話し始めや書き出しの冒頭で正しいのはどちらでしょう。
「きのう友だちが家に来ました」
「きのう友だちは家に来ました」
話し始めや、書き出しの冒頭では<友だちについて説明する>という意識は話し手にありませんので、「きのう友だちが家に来ました」とするが適切です。
「食事ができている」は、ただありようを述べています。
「食事はできている」は、「食事はどうなっていますか」の質問に対して説明する文となっています。
「私は」それとも「私が」?
こちらはどうでしょう。
「きのう私が友だちの家に行きました」
「きのう私は友だちの家に行きました」
先ほどの「きのう友だちが家に来ました」とは逆で
「きのう私が友だちの家に行きました」は不自然ですね。
これは、
日本語では通常、自分のありようを<まるで第三者から見ているかのように述べる>ことをしないからです。
「私」からはじめる文では、<私について解説する>という意思の「は」を使うのが適切だと言えます。
「は」と「が」のほかの用法
「は」には冒頭でみたように、<主題>や<題目>を表わす以外の用法もあります。
否定の文の中で、否定を強調します。
「負けはしたが、いい試合だった」
「不愉快だが、怒りはしない」
「が」には、「~が~たい」や「~が欲しい」といった希望の対象を示す働きがあります。
「私は旅行がしたい」
「私はパソコンが欲しい」
【おまけ】私は足がかゆーい?
通常、日本語では自分が感じている感覚にわざわざ「私は」はつけません。
「私は小指が痛い」
「私は手がしびれている」
「私は背中がかゆい」
のようには、通常は言いません。
ですが、他の人と比べて、強調したい場合には、「私は」を使うことがあります。
他の人はわからないが、「私は手が痛い」のようにです。
「私は」を省略するほかの例も見てみましょう。
腹がたつ
血が騒ぐ
目が覚める
合点がいく
などです。
まとめ
今回は、「は」と「が」の違いや使い分けを見てきましたが、いかがでしたか。
まとめると、
「が」は、
- 主語、述語を示す。
- 前提がある質問に対し、特定的な答えを出す。
- ただ物事のありようを述べる。
場合に使います。
「は」は、
- 他と比べ、他を退ける。多くのものの中から取り立てる。
- 話し手により、物事のありようを説明する意識がある。
場合に使います。
少しでもあなたの疑問が晴れましたなら、幸いです ^^