言葉の頭につけて使う「無」という言葉の使い方が、わからなくなることってありませんか。
「無」だったかなぁ。「不」だったかなぁ、なんて。
言葉の頭につくものには、「無」のほかに「否」や「非」もあります。
なんだかややこしいですよね。
そこで今回は、改めて「無」の使い方や働き、意味を見ていくことにしましょう。
この記事の目次
「無」の使い方
「無」の意味は?
「無」には、「存在しない」「~がない」という意味があります。
さらに「~でない」「~しない」という意味と、
「ないがしろにする」という意味もあります。
「無」は色いろな言葉の前や後、あるいは真ん中について、その言葉が示すもの・ことを次の3つの意味にします。
①「ない」
②「~するまでもない」
③「ないものとする」
です。
①「無い」という意味の言葉
①の「無い」を表すものには、次のようなものがあります。
人がいない、という意味の「無人」
お金を払う必要がない、という意味の「無料」
意味のないこと、という意味の「無意味」
全くない、という意味の「皆無」
そのほかには、「無愛想(ぶあいそう)」や「無一文」「無益」「無休」「無職」「無縁」などがあります。
②「~するまでもない」という意味の言葉
②の「~するまでもない」という意味を持たせる言葉には、
数えるまでもない、数え切れないほど多い、という意味の「無数」や
論じる必要のない、という意味の「無論」や
感慨(心に深く感じること)がはかり知れない、それほど大きい、という意味の「感無量」または、「感慨無量」
などがあります。
③「無いものとする」という意味の言葉
③の「ないものとする」という意味を持つ言葉に、
存在していないかのように振舞う、という意味の「無視」や
法があっても守らない、法がないように振舞う、という意味の「無法」などがあります。
「無」と「否」、「不」、「非」の違い
「無」の使い方は、基本的に「無い」という意味を持たせるということであって、
「同意しない」という意味ではなく、「打ち消す」のでもなく、「道理に合わない」とするものでもありません。
「同意しない」という意味を持たせる言葉は「否」で、
「打ち消す」働きがあるのは、「不」、
「道理に合わない」という意味にするのが「非」です。
「同意しない」という意味の「否」を使う言葉には、否定、拒否、否認などがあります。
「打ち消す」働きの「不」を使うものには、不幸、不吉、不便、不明、不足、不動などがあります。
「道理に合わない」とする「非」を使う言葉には、非常、非凡、非常識、非道、非行などがあります。
「無」と「不」の違い
「無」と「不」の違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
繰り返しになりますが「無」は基本的に「無い」という意味を持たせて、「不」はうち消す働きがあります。
「不幸」は幸福ではない、という意味で、幸福を打ち消しているのであって、幸福が無い、という意味ではありません。
「無」は名詞に、「不」は形容詞、動詞につく
「無」は基本的に、名詞の働きをする語につき、「不」は基本的に、動詞や形容詞の意味を持つ語につきます。
名詞の「糖」や「形」、「線」には「無」がついて「無糖」「無形」「無線」になります。
「通る」という動作を表す語には、「不」がつき「不通」となります。
形容詞の「良い」に「不」がつくと「不良」になって、「良い」を打ち消します。
「無」は全く無い。「不」は少しはある、または停滞している状態のこと
また、もう一つ「無」と「不」の使い分けのヒントとしては、「無」は全く無い、という意味になるのに対し、「不」は全く無いのではない、または停滞している、という意味があります。
「無料」「無敗」「無煙」などは、そのものが全く無い、という意味になりますが、
「不作」「不漁」「不備」「不況」などは、少しはある、または停滞している状況をさします。
「不作」は、全く作物を収穫することができなかったわけではありません。
「不備」は必要なモノが完全には揃っていない、という意味で使います。
「不況」は、経済が停滞している状態のことをさします。
(「無能」や「無情」などの例外もあります。)
「無」と「不」の使い分けや使い方の違いには、このようなことが多くあります。
まとめ
いかがでしたか。
今回は「無」の使い方を中心に見てきましたが、参考になりましたか。
例外があったり、解釈の仕方がややこしい、というものもあるとは思いますが、なんとなくでも、理解していただけたとしたら、嬉しいです。
「無」には「無い」という意味と「~するまでもない」という意味と「無いと見なす」という意味があります。
主に名詞につきます。
このポイントをおさえておけば、さほど混乱することは無いでしょう。
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敬語のよくある間違いは?
「花果」が「無い」という字が当てられている植物に「無花果(いちじく)」があります。
無花果は、袋状になった実の内側にたくさん咲くのですが、外からは全く見えなかったので、このような名前が付けられた、と言います。
余談でした。