ニキビをきちんと治療していなかったり、間違った治療をしていたり、無理につぶしたりすると、炎症が重症化して、ニキビの跡(痕)が残ってしまうことがあります。
残ってしまったニキビ跡を消すためには、ニキビ跡の症状に応じた対処をすることが大切です。
今回は、ニキビ跡のタイプや原因、治し方などについて解説していきます。
この記事の目次
ニキビ跡ができてしまう原因
初期のニキビ治療の不十分
毛包(もうほう)と呼ばれる、毛根を包んでいる部分にニキビの炎症が起きても、ごく初期のうちに炎症を十分に抑えることができていれば、皮膚の状態は、自然治癒力により元に戻るはずだと言われています。
ニキビを繰り返すことによる損傷
膿(うみ)や、袋のようなものができてしまうくらい炎症がひどくなると、繰り返しニキビができて毛包が損傷し、炎症が真皮内にまで達してしまうことがあります。
赤みが残るニキビ跡
その結果、血管がうっ血したり、拡張したりして、ニキビがおさまっても赤くニキビ跡が残ってしまうことがあります。
色素沈着が残るニキビ跡
血管が損傷している場合は、血液がしみだして、時間と共に変色し、シミのような色素沈着が残ることもあります。
また、真皮内に炎症があることで、日焼けによるシミができやすくなることもあります。
へこむニキビ跡(クレーター)
炎症により、真皮や毛包組織が完全には修復できずに、線維化(せんいか)という組織の委縮が起こってしまうこともあります。
組織が委縮して、肌の表面がへこんでしまうのが、「陥凹性瘢痕(かんおうせいはんこん)」というニキビ跡で、クレーターと呼ばれることもあります。
盛り上がるニキビ跡
炎症あとにおこる自然治癒の過程で、真皮内に肌の弾力を作り出す線維芽細胞(せんいがさいぼう)や、コラーゲン線維が過剰に増えてしまうことがあります。
その結果、皮膚が盛り上がってニキビ跡ができてしまいます。
へこんでいるニキビ跡は3種類
へこんでできる「陥凹性瘢痕(かんおうせいはんこん)」には、形状の違いにより、次の3つのタイプがあります。
- アイスピック型(Icepick scar:アイスピックスカー)
- ローリング型(rolling scar:ローリングスカー)
- ボックスカー型(boxcar scar:ボックスカースカー)
アイスピック型(Icepick scar)
アイスピックで刺したような、細く点状にへこんだニキビ跡を、アイスピック型といいます。
アイスピック型は、直径が2㎜以下の細くて深い、先細り型のニキビ跡です。
ローリング型(rolling scar)
直径約1~4mm以上で、なだらかにへこんでいるニキビ跡を、ローリング型といいます。
皮下の線維組織が委縮して、引っ張られるように表面がへこんでしまったものです。
ボックスカー型(boxcar scar)
ローリング型とは異なり、垂直にへこんでいるニキビ跡がボックスカー型です。直径は約4~5mm以上で、浅いもので0.1~0.5mm、深いもので0.5mm以上の深さがあります。
盛り上がっているニキビ跡
盛り上がるニキビ跡には、次の2つがあります。
- 肥厚性瘢痕(ひあつせいはんこん)
- ケロイド痤瘡(ざそう)
肥厚性瘢痕(ひあつせいはんこん)
下あごや胸、お腹などにできやすいのが、肥厚性瘢痕(ひあつせいはんこん)で、線維組織の盛り上がりは比較的なだらかです。
ケロイド痤瘡(ざそう)
見るからにはっきりと、ぽっこりと盛り上がっているのが、ケロイド痤瘡(ざそう)と呼ばれるもので、遺伝や体質などが関係していると考えられています。
ニキビの跡が残りやすい原因
ニキビ跡ができてしまう原因は、すでに述べましたが、ニキビ跡が残ってしまいやすい原因には、次のようなことがあると言われています。
- 自分でニキビを触って刺激を与える
- ひげや毛をそる時に、2次感染を起こしている
- 毛穴や毛包に、MMP(マトリックスメタロピロテアーゼ)というタンパク質分解酵素などが多い
などです。
赤み・色素沈着ニキビ跡の治療
赤みや色素沈着のニキビ跡は、ターンオーバーが正常に行われる過程で、薄くなっていくことが多いと言われています。
ターンオーバーを活発にするためには、ビタミンCなどのビタミン類の栄養素を積極的に摂取したり、睡眠を十分とるなどの生活習慣の改善のほかに、ビタミンC配合クリームなどの使用も効果的です。
また皮膚科などで、ケミカルピーリングやレーザー・光治療が行われることもあります。
(ケミカルピーリングやレーザー・光治療については後述しています。)
でこぼこニキビ跡の治療
現在、へこみや盛り上がりのあるニキビ跡の治療として、標準的に確立されているものはありませんが、実用的で改善効果の高いものがいくつかあります。
ここでは、効果の高さに関係なく、一般的に行われている治療法について解説します。
へこんだニキビ跡の治療
へこんだニキビ跡「陥凹性瘢痕(かんおうせいはんこん)」の治療には、次のような方法があります。
- デルマパンチ手術
- 真皮切除術(しんぴせつじょじゅつ)
- 瘢痕修正手術(はんこんしゅうせいしゅじゅつ)
- ダーマブレージョン
- レーザー皮膚アブレーション
- フラクナショナルレーザー治療
- 高周波療法(こうしゅうはりょうほう)
- ケミカルピーリング
- 皮膚充填剤(ひふじゅうてんざい)の局所注入
- マイクロダーマブレージョン
- 外用薬
それぞれについて簡単に解説します。
デルマパンチ手術
デルマパンチという器具を使って、ニキビ跡を直接切り取るか、へこんだ部分を押し上げるか、正常な皮膚から植皮するか、などの方法が行われるのが、デルマパンチ手術です。
真皮切除術(しんぴせつじょじゅつ)
ニキビ跡の真下にある線維化してしまった組織を切断して、へこみを目立たなくする方法が真皮切除術です。
瘢痕修正手術(はんこんしゅうせいしゅじゅつ)
形成外科的手術により、ニキビ跡を目立たなくする方法が、瘢痕修正手術です。
ダーマブレーション
高速回転するグラインダーなどを使用して、皮膚表面をなめらかにしようとするのがダーマブレーションです。
この操作自体で、色素沈着やへこみを作ってしまうこともあると言われています。
レーザー皮膚アブレーション
おもに、コンピュータースキャナ付きのCO2レーザーを使用して、皮膚の一部をごく薄くはぎ取り、表面をなめらかにしようとするのが、レーザー皮膚アブレーションです。
術後の皮膚の赤みやはれ、色素異常などの合併症を起こす頻度が高いと言われています。
フラクナショナルレーザー治療
レーザー皮膚アブレーションにかわり開発されたのが、フラクナショナルレーザー治療で、点状にレーザーを当てるので肌の再生化が早く、深く当たる分、治療効果も高いと言われています。
フラクナショナルレーザーには、波長の特性の違いで、蒸散型と凝固型があります。蒸散型の方が効果が高い治療を施行できると考えられていますが、施行後にでる肌の赤みやはれ、色素沈着などの症状が引くまでに時間がかかったり、色素脱出や細菌による2次感染などの合併症のリスクも高くなると言われています。
高周波療法(こうしゅうはりょうほう)
フラクナショナルレーザー治療とは異なり、表皮の変性が少ないと言われているのが、円錐状に深く高周波を当てる高周波療法です。
ケミカルピーリング
皮膚表面に薬剤をぬって皮膚をはがし、真皮の再生を促進させてニキビ跡のへこみや赤み、色素沈着などの症状を改善しようとするのが、ケミカルピーリングです。
皮膚充填剤(ひふじゅうてんざい)の局所注入
しわの治療などに用いられるコラーゲンやヒアルロン酸、ハイドロキシアパタイトなどの充填剤をニキビ跡の下に注入してふくらませ、目立たなくしようというのが皮膚充填剤の局所注入です。
充填剤は体内で分解されるため、定期的に注入を繰り返す必要があります。
マイクロダーマブレージョン
マイクロダーマブレージョンは、薬剤を使わないで行う一種のピーリングで、酸化アルミニウムの粉を皮膚に吹きかけて、古い角質を削り取ります。
外用薬
トレチノイン酸、グリコール酸などの外用薬や、ビタミンC配合クリームなどの長期にわたる使用は、真皮の線維芽細胞やコラーゲンなどの産生を促す効果があると言われています。
ニキビ跡が残りやすい原因のひとつになっている、MMP(マトリックスメタロピロテアーゼ)というタンパク質分解酵素の産生を抑える働きがありますので、ニキビ跡形成の予防効果も期待されています。
盛り上がったニキビ跡の治療
盛り上がったニキビ跡の治療には、次のような方法があります。
- ステロイド局注療法
- 外科的切除
- レーザー・光治療
- トラニスト内服
- テープ治療
- 液体窒素療法
ステロイド局注療法
皮膚表面を平らにする目的で行われるのが、ステロイドを局注する方法です。
施術時に痛みがあったり、使用するステロイドの量が多すぎると、毛細血管の拡張や皮膚委縮が出ることがあると言われています。
外科的切除
盛り上がっている皮膚を切除して縫うのが、外科的切除ですが、再発率は高いと言われています。
レーザー・光治療
レーザー・光治療は、盛り上がっている部分の血管拡張を治療する方法で、赤みを軽減させ、ニキビ跡形成の進行も抑えると言われています。
トラニスト内服
化学伝達物質の遊離を抑えたり、コラーゲンの合成を抑えることで、ニキビ跡の改善効果が期待されているのが、トラニストという薬です。
やけどや手術のあとに処方されることがあります。
テープ治療
盛り上がりのあるニキビ跡は、常に力がかかる部位にできやすいため、圧迫して安静を保つ目的で行われるのが、テープ治療です。
液体窒素療法
綿棒などに染み込ませた液体を使って、凍結と融解を繰り返し、皮ふ表面の異常組織を壊死させる方法が、液体窒素療法です。
ニキビ跡を作らないために
ニキビ跡を作らないためには、ニキビができる初期段階から、診察を受けて適切な治療を行うことが大切です。
治療には、肌にぬる外用薬や、白血球の移動を抑える内服薬などが用いられます。
膿や袋ができている場合には、レーザーなどで穴をあけ、内部の異物を取り除いたり、そこに薬剤を注入したりなどの治療が行われることもあります。
まとめ
ニキビ跡について見てきましたが、いかがでしたか。
ニキビ跡には、赤み、色素沈着、3つのタイプのへこみ、2つのタイプの盛り上がりなどがあり、それぞれに有効な治療法や改善方法が異なります。
ニキビができてしまったら、ニキビ跡が残りやすい行為を避け、早めに皮膚科などを受診されることをおすすめします。
ニキビは、決して触らないように注意してくださいね ^^)