ニキビの治療に、漢方が効果を発揮することは少なくありません。
漢方は、副作用が少ない上に、根本原因を改善したり、ニキビの状態に合わせて用いることができるなど、ニキビを効果的に治すことも期待できます。
今回は、ニキビ治療に効果的な、「漢方」について解説していきます。
この記事の目次
ニキビに効果のある漢方は?
漢方をニキビ治療に用いるためには、たくさんある漢方薬それぞれの効果・効能をきちんと理解することが大切です。
漢方薬には、炎症の再発を予防するものや、ニキビの原因であるホルモンの乱れを改善する作用のあるものなど、ニキビの原因が様々あるように、いろんな漢方薬があります。
ニキビの漢方薬には、2つの選び方が。
漢方薬の選び方には、次の2通りがあります。
- ニキビの状態によって選ぶ
- 原因別で選ぶ
今のニキビの状態を改善したいのはもちろんですが、元となる原因を改善することも大切です。
まずは、ニキビの状態によって、どんな漢方薬が向いているのかを見ていきましょう。
漢方薬をニキビの状態によって選ぶ
白ニキビの改善には、「桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)」
ニキビの初期症状である、毛穴の奥にできる皮脂などのつまりは、漢方の世界では瘀血(おけつ)と呼ばれ、血の流れのとどこおりが原因と考えられています。
白ニキビの改善には、血のとどこおりを改善する効果のある「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」に、「薏苡仁(よくいにん)」を加えた「桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)」が用いられることが多いです。
「薏苡仁(よくいにん)」には、
- 水分を調節する作用
- 炎症を抑える作用
- 皮脂の分泌機能を調整する作用
などがあると言われています。
「薏苡仁(よくいにん)」には、好転反応も。
「薏苡仁(よくいにん)」を用いた場合、一時的にニキビが悪化することもあると言われています。
これは、好転反応ということもありますが、用いる時には注意が必要です。
好転反応は、ほかの漢方にあらわれることもあります。
赤ニキビの改善には「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」
炎症が始まった初期の赤ニキビには、消炎・排膿作用のある成分を含む「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」が効果的だと言われています。
十味敗毒湯には、
- 炎症を抑えて、膿を出しやすくする作用のある、柴胡(さいこ)、桜皮(おうひ)、桔梗(ききょう)、甘草(かんぞう)
- 症状をやわらげ、痛みやかゆみを抑える作用のある、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、独活(どくかつ)、川芎(せんきゅう)
- 利水作用のある、独活、茯苓(ぶくりょう)
- 肌の調子を整える、生姜(しょうきょう)、甘草
などが含まれています。
含まれているものは、製薬会社により若干の違いがあります。
赤ニキビ~黄ニキビの改善には「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」
「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」は、化膿性の皮膚疾患に、よく用いられる漢方薬です。
清上防風湯には、
- 症状をやわらげる作用のある、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、薄荷(はっか)、白芷(びゃくし)
- 解熱と炎症を静める作用のある、連翹(れんぎょう)、山梔子(さんしし)、黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)
- 膿を出す作用のある、川芎(せんきゅう)、桔梗(ききょう)、枳実(きじつ)、白芷(びゃくし)
などが含まれています。
男性に多い脂漏性のニキビに対し、有効であることが多いと言われています。
黄ニキビの改善には「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」
「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」は、
- 炎症を静める作用のある、黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)、連翹(れんぎょう)
- 膿を出す作用のある、桔梗(ききょう)、枳実(きじつ)、白芷(びゃくし)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)
- 症状をやわらげる作用のある、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、薄荷(はっか)、柴胡(さいこ)
- 肌に潤いを与え、ホルモンのバランスを整える作用のある、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)
などが含まれています。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)にはアクネ菌に対し、ほかの漢方に比べ、高い抗菌活性があることを示す調査結果があり、思春期のニキビや炎症が肌の奥におよぶ慢性のニキビを改善する効果がある、と言われています。
漢方薬と抗生物質の併用はあり?
ニキビ患者を対象にした調査で、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)だけを服用したグループと、抗生物質(テトラサイクリン系)だけを服用したグループと、両方を服用したグループとを比べた結果、8週間後の観察で、両方を服用したグループに最も高い改善がみられた、という結果のでたものがあります。
医療機関では、抗菌薬内服治療のあと、 ニキビ跡が残らないようにするために、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)が用いられることもあります。
漢方薬を、ニキビの原因別で選ぶ
ニキビができる原因も様々です。
漢方薬をニキビの原因で選ぶ場合には、次の4つがあります。
- ホルモンバランスの乱れを調整する漢方薬
- 生理前の自律神経の乱れを改善する漢方薬
- 血のめぐりが悪く、むくみや冷え性を改善する漢方薬
- 便秘を改善する漢方薬
それぞれに効果的な漢方薬には、次のようなものがあります。
ホルモンバランスの調整には、「四物湯(しもつとう)」+「小柴胡湯(しょうさいことう)」
ホルモン分泌の乱れが原因になっているニキビには、ホルモン分泌を調整する作用のある「四物湯(しもつとう)」と、情動中枢を調整する作用のある「小柴胡湯(しょうさいことう)」を合わせて用いることが多いです。
生理前の自律神経の乱れを改善する「加味逍遥散(かみしょうようさん)」
自律神経の調整には、加味逍遥散(かみしょうようさん)を、標準治療薬と併用することで効果が出やすいと言われています。
「加味逍遥散(かみしょうようさん)」には、
- 自律神経を調整する作用のある、柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)
- 症状をやわらげる作用のある、荊芥(けいがい)、薄荷(はっか)
- 月経障害を改善する効果のある、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)
- 水分を調整する効果のある、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)
- 炎症とイライラを抑える作用のある、牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしし)
などが含まれています。
血行が悪く、むくみや冷え性を改善する「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「五積散(ごしゃくさん)」
血を巡らせる力が弱く、むくみや冷え性をともなうニキビには、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」を外用薬に併用することで、効果が出やすいと言われています。
冷えが強い場合には、「五積散(ごしゃくさん)」なども効果的です。
どちらにも
- 血行を改善する、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)
- ホルモンの分泌を改善する、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)
などが含まれています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)には、
- 体内の過剰な水分を排出し、むくみを改善する効果のある、沢瀉(たくしゃ)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)
なども含まれています。
便秘を改善する漢方薬「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」など
ニキビをともなう便秘の改善には、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「通導散(つうどうさん)」、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」などに効果があると言われています。
便秘になると、口周りや頬、フェイスラインにニキビができやすい、という方は多いですね。
漢方薬は、腸内環境に左右される
漢方薬の効果は、腸内環境に大きく左右されると言われています。
漢方薬を服用しても腸内環境が悪ければ、有効成分が吸収されず、あらわれる効果もあらわれにくくなる、ということがあり、効果がではじめるまでに、数カ月~1年かかることもあります。
逆に腸内環境がよければ、3日~1週間くらいで効果があらわれることもあると言われています。
漢方薬の効果を活かし、早めにニキビを治すためには、食習慣の見直しも合わせて行うことが大切になってきます。
漢方薬の効果を、ニキビ治療に活かすために
漢方薬をニキビ治療に活かすためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。
- 白砂糖の入った、甘いものを控える
- n-6系脂肪酸(リノール酸)の摂りすぎに注意する。コーン油、大豆油、サフラワー油など
- n-3系脂肪酸を摂取する。α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)など
- 野菜を多く摂る
などに気を付けて、食生活を改善しましょう。
自己判断で服用しないようにしましょう。
漢方薬を服用する前には、含まれている成分に対してアレルギーがないか、チェックする必要があります。
服用後は、副作用が出ていないか、細心の注意を払うことも大切です。
漢方薬にも、適切な服用量がありますし、きちんとニキビの状態を知ることも重要ですので、まずは皮膚科を受診し、医師に相談されることをおすすめします。
漢方薬は副作用が少ないとはいえ、長期の服用で静脈硬化症などを発症することもあると言われています。
薬局などで買える市販の漢方薬は?
漢方薬は、薬局やドラッグストアなどでも市販されていますので、購入することは可能です。
インターネットでも購入することはできます。商品を見てみたい方は、こちらから、漢方薬で有名なツムラの製薬をご覧ください。
まとめ
ニキビを治す効果のある漢方薬には、
- 白ニキビに適した「桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)」
- 赤ニキビに適した「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」
- 赤ニキビ~黄ニキビに適した「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」
- 黄ニキビに適した「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」
- ホルモンバランスの調整に、「四物湯(しもつとう)」+「小柴胡湯(しょうさいことう)」
- 自律神経の乱れを改善する「加味逍遥散(かみしょうようさん)」
- 血行を改善する「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「五積散(ごしゃくさん)」
- 便秘を改善する「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「通導散(つうどうさん)」、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」
などがあります。
漢方薬の効果を高めるためには、ご紹介した方法で、腸内環境を整えることもとても大切です。
漢方薬を処方されたら、忘れずにきちんと飲むことも大切ですね ^^